『アイドルマスター シンデレラガールズ』の2ndシーズンの幕開けとなる第14話の考察と感想です。相変わらず高密度で1カットも見逃せない内容になっており、繰り返し視聴すればするほど楽しくなってくる魔法の時間のはじまりです。今回の見所は、1stシーズン後のアイドルたちを取り巻く現状と、美城常務の凱旋による急展開、そしてその布石の埋め込まれ方ですね。
TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」オフィシャルサイト
待ちに待った『アイドルマスター シンデレラガールズ』の2ndシーズンがはじまりました。1stシーズンでは、タイトル通りにシンデレラストーリーをなぞっているように思わせてから、都合のいい魔法の力ではなく自分たちの足でお城への階段を駆け上がる、という実に「アイマス」らしい内容でした。全編にわたってあまりにも演出が巧妙で、無駄なカットなど1つも存在しない高密度な物語でしたから、その続きに期待しないわけがありません。
1stシーズンの考察は以下を参照。
2ndシーズンのスタートとなる第14話ですが、個人的には「前期と今期の繋ぎの回だろう」と思っていました。実際、その予想は大きく外れてはいなかったのですが、アイドルとプロデューサー(以下、P)に立ち塞がる最初に試練が予想外にデカかったですね。開幕から全ゲージ消費技をぶっぱなされた気分です。アニメ版『アイドルマスター』(以下『アニマス』)でも後期の初回は、順調に活動しているアイドルたちに961プロが影を落とす内容で波乱を予感させるものでしたが、『シンデレラガールズ』の方がインパクトは強い印象かも。
1stシーズンから繋がるシンデレラプロジェクトの現状
第14話の柱の1つが「1stシーズンの後のシンデレラプロジェクトの状況」です。舞台は、アイドルサマーフェスで最初の大きな成功を彼女たちの1ヵ月後となっています。『アニマス』では街頭の看板やTV出演など、大躍進をみせていましたが、『シンデレラガールズ』では、ラジオ出演やミニライブなどが主な活動のようで、幾分控えめで現実的かも。とはいえ、1stアルバムの宣伝が街頭モニターに流れているので、大きな一歩を踏み出した直後、って感じでしょうか。ミニライブの観客数も増えてますし、知名度は着実に上がっている模様。
1stアルバムのジャケットは『GOIN’!!!』のジャケットと同じですね。シングルではなくアルバムのリリースはかなり大きな仕事といえるでしょう。トップアイドルへの道のりはまだまだ遠いですが、上昇気流に乗って順調に飛び上りつつある…、それがシンデレラプロジェクトの現状なのでしょう。
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幸せそうにCD多々買いの話をする卯月ですが、個人的にはこれが何かの布石なのかと怯えております。というのも、彼女は1stシーズンで大きな試練を受けていないんですよね。6,7話は物語の谷でしたが、あそこで試練を受けていたのは未央と凛であって、卯月は直接的ではありませんでしたし。あと、『アニマス』での春香さんの扱いを考えると、どうしても卯月の試練の重さに身構えてしまいますね。家族や親類に愛される彼女ですが、それがプレッシャーとなって跳ね返ってくるのでしょうか。無敵の笑顔が崩れる日はくるのか。
スケジュール表もなかなかの埋まりっぷり。CANDY ISLANDにバラエティ番組のオーディション予定があったり、凸レーションにPIKAPIKAPOPというブランドとコラボ企画があったりと、これまでの経験を活かしたイメージ戦略が組まれているようですね。ユニットごとの活動がメインであり、全体での仕事はなさそうかな? アイドルユニットって大人数でデビューさせた後、人気のありそうな人をピックアップして別ユニットを組ませるような方針が普通かと思っているのですが、シンデレラプロジェクトって逆なんですよね。そう考えると大胆なプロジェクトなのかも。
仕事の内容そのものに大きな変化はないようにみえますが、New Generationsが大学の学祭でライブをやっているシーン、規模の小さなライブであっても、いい笑顔ができるようになった、という意味で彼女たちの成長がうかがえるだけでなく、これって大学の運営側から声をかけられたってことなんじゃないでしょうか。以前のミニライブは事務所側が場所を抑えて開催したのでしょうけど、学祭のライブって事務所側から依頼するとは思えないので。つまり、彼女たちの知名度が上がっているということで、やっている仕事はあまり変わらないようにみえても、取り巻く環境は確実に変わり始めている、という描写も含まれているのかな、と。
ところで、大学の控室のホワイトボードに描かれた3人がやけにかわいい。
成長の描写といえば、やはり欠かせないのがPですね。1stシーズンのPは、アイドルたちに魔法をかけた張本人でありつつも、彼自身も成長を必要としている1人として描かれていました。あれからアイドルたちと向き合って積極的に接しているようで、終始やわらかい表情になっているのが印象的。この穏やかな表情、1stシーズンの序盤とはまるで別人のようです。
5つのユニットを掛け持ちしているので、すべての現場についてまわることはできませんが、アイドルたちもPがいなくても仕事をキッチリこなせるようになっているのも成長の描写でしょうね。以前は単にアイドルと向き合っていなかっただけでしたが、いまでは互いの信頼関係のもとに、離れていても問題なく動けているのでしょう。
また、Pとアイドルの信頼関係の描写として、距離感の描き方が絶妙でした。人間の距離感というものは2人の関係に影響されるものですが、それがちゃんと絵で表現されています。Pと凛の距離はかなり近く、信頼のおける仲間としての関係がうかがえますが、美嘉と凛の距離は微妙な距離感で、よい先輩だけどもう一歩は踏み込んでこない部外者、って感じ。
上のシーンだけだと何とも思わないのですが、下のシーンは2人の会話シーンにしてはちょっと離れすぎにもみえます。しかし、これが2人の関係をあらわす距離感としては絶妙という他ないでしょう。
ともあれ、1stシーズンの後も、順調に充実したアイドル活動ができており、小さくとも着実に前進していることが描かれていました。1stシーズンでさまざまな試練を乗り越えてきたのですから、感慨深いものがありますよね。
新展開を予感させる出会いの連続
今回はシンデレラプロジェクトのメンバー以外にも、多数のアイドルが登場しました。今後の展開に向けて、特に重要そうなキャラクターは北条加蓮と神谷奈緒、それから木村夏樹の3人でしょうか。シンデレラプロジェクトと他部署のアイドルとの出会い、これが今後にかなり響きそうですね。
加蓮と奈緒は1stシーズンのラストで、アイドルサマーフェスに観客として登場しており、2ndシーズンでも何かしらの役割がありそうでしたが、早くも346プロの新人アイドルとして再登場。アイドルとして一歩先を行く凛を目標とする後輩、という位置づけになりました。アイドルの活動を「楽しくなる途中」と語る凛にとって、ライブを褒められたことや後輩ができたことは、充実感にプラスとなるのでしょう。この3人は、いかにも女子高生っぽい感じが共通項かな?
夏樹は李衣菜の前でギターを披露してファンを1人増やしました。なんちゃってロックに本物のロックをぶつけるクールな展開ですが、李衣菜のキラキラっぷりにちょっと笑ってしまいました。前川という伴侶がありながら…。外面だけをみれば、ロックな2人の相性はよさげですが、Pのユニット編成ってアイドルたちの内面を考慮したものなので、今後そのあたりがどう影響するのか気になるところ。
ちなみに、李衣菜が練習している場面でテーブルの上に置いてある花は、おそらくゼフィランサス。ガンダムじゃないです。花言葉は、「清純の愛」とか「期待」とか。ロックに恋する純な李衣菜にピッタリですね。
他にも探偵ごっこパートで多くのアイドルが登場していますが、そちらはゲストっぽい扱いで、今後の展開に深く関わる感じではないのかなと推測。とはいえ、この手のサプライズは今期も多々あるのでしょうね。
それにしても、卯月も言っていましたが、人材豊富すぎませんかね、346プロ。もう村の1つや2つは築けそうです。
Pを支えるアイドルたち
Pを背後に忍び寄る影を追う探偵ごっこパートでは、ゲスト多数の上に、佐久間まゆの大役というサプライズもあり、ギャグっぽい日常とキャラクターの再紹介を兼ねた展開でした。ここで大事なことは2つ。1つはアイドルたちがPを助ける側に回っているということですね。一方的に支えられるのではなく、お互いに支え合う関係になっているのです。それだけ信頼関係がレベルアップしているということでしょう。
そういえば、心霊写真ってフィルムカメラだからこそ発生する現象だったので、デジタルカメラになってからはさっぱり発生しなくなっているのですよね。携帯電話やスマートフォンのカメラでも同様。生まれたときからデジタルな世代って、心霊写真と聞いてピンとくるものなんでしょうか。その手のTV番組も減ってますし。
心霊写真にもまったく動じないみりあちゃん。「幽霊に会いたい」という言葉に嘘はなかったのでしょう。だから怖がったりしません。純粋すぎる…。
もう1つの大事なことは、シンデレラプロジェクト以外の他部署にも当然Pが存在しており、彼らも担当アイドルたちと信頼関係を築き上げている、ということ。「アイドルマスター」はPとアイドルの信頼関係がカギになる世界ですからね。まゆが自分のPに誕生日のお祝いをしたいと願うのは、信頼関係があるからこそ。他部署でもシンデレラプロジェクトと同じように、さまざまな試練を乗り越えることで信頼関係を築き上げているのでしょう。
完全にサスペンスなまゆ。ここからナイフが落ちるカットで繋ぐのは見事。この後、卯月の「私もちょっと楽しかったです」に対するPの「ええっ!?」がマジっぽい声だったのがいいですね。島村さんはそんなことしない!って思っていたのでしょうか。
最後に「また事件があったら教えてね」と声をかけるみりあでしたが、次に起こる事件は探偵ごっこではどうにもならなさそうです。
美城常務による波乱の幕開け
全体的に1stシーズンからの延長線上の展開だった第14話ですが、Cパートで一変します。前期の最終回にシルエットとして登場していた彼女は346プロダクション会長の娘であり、ニューヨークの部署からアイドル部門の統括重役として赴任した美城常務。彼女による「白紙宣言」が、2ndシーズンの真の幕開けであるといっても過言ではないでしょう。今回は1stシーズンの延長だったからこそ、OPが前期と同じ『Star!!』だったのでしょうね。しかし、ここからが本番です。
第14話のサブタイトルは「Who is the lady in the castle?」、直訳すれば「お城の女性は誰?」。もちろん答えは美城常務でしょう。346プロという「お城」の女性であり、統括重役というポジションはまさに女王でもあります。”castle”は”美城”という名前にもかかっているのでしょうね。
14話における美城常務の印象は、未央の言っていたように「できる女って感じ」ですね。初対面のPに対してネクタイを正してくれるというのは、軽いジャブですけれども、決して悪い印象ではありません。初対面にもかかわらず、New Generationsの3人の顔と名前が一致しており、淡泊とはいえエールを送ってくれるくらいですから、悪人ではなさそう。961プロの社長みたいな、わかりやすい悪役、というわけではなさそうです。少なくともいまのところは。
今回の話から読み取れる美城常務という人物像ですが、帰社前のピリッと緊張感のある空気から、かなり厳しい性格であることがうかがえます。海外から直接出社した上に即座に書類に目を通し、日本国内の状況も把握しているので、厳しいだけでなく、実際に仕事ができる人でもあるのでしょう。
また、人間関係と距離感の話に戻りますが、初対面の人に手が届くほどの距離に詰め寄ってくるところにも性格があらわれているように思えます。ネクタイなんて口頭での指摘くらいでよさそうなものですが、そうはしないところが彼女の性格なのではないかと。仕事のためなら他人の気持ちなどお構いなしにズケズケと踏み込んでくる…それが彼女のスタイルなのかもしれません。となると、仕事はできるけど衝突も生みやすそうな感じですね。
それにしても結構デカイ美城常務。ヒールを履いているとはいえ、Pと並んでこれだときらりくらい身長がありそう。
部長やちひろは美城常務のことを知っているようですが、Pは初対面だったので、ニューヨークへの赴任期間もそれなりの長さがあったようですね。Cパートにおける部長とちひろの浮かない表情と、フラットなPの表情のコントラストも印象的。彼女の厳しいやり口を知っているからこそ、「白紙宣言」もある程度は予想ができていたのかもしれません。
めずらしく浮かない表情のちひろさん。決して「再編成だから新しいイベントを考えなくっちゃ…」と思っているわけではありません。たぶん。
第14話の巧妙なところは、Cパートの「白紙宣言」を受けて、それまでの話が一気に繋がるところですね。加蓮と奈緒、夏樹との出会いがこれからアイドル再編成に向けて大きな意味を持ちそうですし、Pと信頼関係を築いているのはシンデレラプロジェクトだけではないことも、反感や不安の材料としては十分です。ちなみに、まゆのPもシンデレラプロジェクトのPと同期だから、美城常務を知らない世代でしょうね。
次回、第15話のサブタイトルは「When the spell is broken…」、直訳すると「魔法が壊れたとき」。346プロのエントランスの時計は12時で止まっていますから、「魔法が解けたとき」と訳すのもよさそうですが、”spell”には”綴り”の意味も込められていると思います。シンデレラプロジェクトから生まれた5つのユニットは、Candy Island、NewGenerations、DEcolation、Rosenburg Engel、Love Laika、Asterisk、で、”Cinderella”なので、これがバラバラになってしまうことが含まれているんじゃないかと。第14話において、仕事もプライベートもユニット単位での行動が多かったのも布石なのかもしれません。
そういえば今回、事務所に置いてあった花は彼岸花ですね。メンバー全員が1つずつ私物を持ち込むルールで花を持ってきたのは花屋の凛でしょうから、今回も凛のセレクションなのでしょう。アイドルサマーフェスが終わって1ヵ月なので、9月くらいと考えれば季節の花ですね。ピンクの彼岸花の花言葉は、「想うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」。序盤のシーンから別れを予感させる小道具が置かれていただなんて、本当に抜け目ない…。
そんなわけで、『シンデレラガールズ』は2ndシーズンも相変わらずの密度で進みそうです。なんとなく流していても楽しいけれど、じっくりと観賞していると、観れば観るほど味わい深い内容にもなっており、安定のハイクオリティですね。すばらしい。いきなりラスボス級キャラクターが「白紙宣言」という全体攻撃をぶっぱなしてきたため、すでに展開の予想もしづらくなってきましたし、ますます今後が楽しみです。「アイドルたちが試練を乗り越えて舞台でキラキラするんでしょー?」という安直な予想はしていたものの、まさか1発目からこれほど重たい試練が用意されているとは…。
最後に、全然関係ありませんが、相変わらず前川の髪の毛がサラッサラでよく動いていましたね。たしかに猫耳がなければ特徴の少ない彼女ですが、このサラサラの動きは並大抵のことではありません。1stシーズンから思っていましたが、アニメーターさんに前川Pがいるに違いありません。よかったな前川ァ!
続く第15話の考察はこちらからどうぞ。
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