アニメ【シンデレラガールズ】15話の考察と感想と 高垣楓を輝かせる12時過ぎの魔法

第14話の「白紙宣言」で最初から大波乱を予感させる『アイドルマスター シンデレラガールズ』の2ndシーズン。続く第15話では、高垣楓にスポットを当てつつ、再び童話の「シンデレラ」に準えた物語がはじまります。今回から新OPも披露され、今期の作品のテーマがみえてきたように感じますね。

TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」オフィシャルサイト

2ndシーズンの初回となる第14話では、1stシーズンから続くシンデレラプロジェクトのその後が描かれていました。お城への道のりはまだまだ遠いけれども、順調に一歩一歩階段を上っている様子がうかがえる内容でした。しかし、それはあくまで前期の延長にすぎません。Cパートの美城常務の「白紙宣言」によって2ndシーズンが真に幕を開けたのです。

前回、第14話の考察と感想は以下よりどうぞ。

上記の記事でも書きましたが、第15話のサブタイトルは「When the spell is broken…」で、直訳すれば「魔法が解けたとき」。”spell”に”綴り”という意味も込められているとすれば、”Cinderella”に込められた5つのユニットが解体されることも含まれていそうだと予想していました。しかし、ユニット解散の危機には「待った」をかけた形になりましたね。新OPもユニット単位で映っているので、安泰なのでしょうか。

裸足で駆け出すオープニングの考察

第14話は1stシーズンの延長だったので、オープニングはなく、前期OPの『Star!!』が挿入される形でスタートしました。第14話のラストからようやく2ndシーズンが開幕したので、今回の15話から新オープニングがお披露目、というわけですね。新OPソングは『Shine!!』で、アイドルたちがイメージビジュアルと同じ白いワンピース姿で登場。開幕に星が輝いて飛び散るあたり、前期から今期へストレートに繋げられていますね。

物語に童話の「シンデレラ」を何度も被せてくる本作ですが、ガラスの靴ではなく素足で駆け出すシーンに重ねられた歌詞が非常に印象的。本作が「シンデレラ」と重ねられていても、誰かの魔法の力で都合よく成功できる「シンデレラストーリー」ではない心意気が見事に表現されているように感じます。

ねぇ 探していたのは 12時過ぎの魔法
それはこの自分の靴で 今進んで行ける 勇気でしょ

アイドルマスター シンデレラガールズ 2ndシーズンOP

彼女たちの後ろに落ちている壊れた時計は、魔法の時間を過ぎてしまったというよりは、もう魔法の時間はやってこない、でも、魔法に頼ることなく自分たちの力でお城への階段を駆け上がるのだ、ということを示唆しているのでしょうか。白いワンピースのみの彼女たちは、魔法の力を纏わない素の状態なのだけれど、それでも手を取り合うことで走り出せる、と。

後半に着ている衣装も、お姫様っぽくないんですよね。どちらかといえば王子様っぽい。たしかに、ガラスの靴を携えた王子様がやってくるのをじっと待っているような話ではないでしょうから、「新たな自分に会いに行こう」と歌われているように、新しい自分を迎えにいくのは自分自身なのかもしれません。

お馴染みの花言葉ですが、OP序盤の噴水で映っているのは赤とピンクのコスモスで、花言葉は「乙女の純潔」とか「調和」とか。そして全編に渡って舞い散っているのは桜ですね。ソメイヨシノにも「純潔」の花言葉がありますが、桜全般だと「精神の美」「優美な女性」。サマーアイドルフェスに続く季節なので、コスモス(秋桜)はちょうど季節の花ではありますが、秋の桜から春の桜へ、純潔な乙女から優美な女性への成長が示唆されているのでしょうか。


では、いいかげん本編へ進みましょう。

輝くトップアイドル高垣楓

美城常務の「白紙宣言」によって騒然とする346プロの中で「トップクラス」のアイドルである楓さんのとった行動が第15話のキーポイントでしょう。楓さんは1stシーズンでも卯月たちの憧れるスターであり、雑誌や看板に何度も登場しているように、すでに大きな成功を収めている先輩アイドルというポジションです。

ゲームと同様、ミステリアスで透明感のある儚げな容姿に反して、ダジャレ好きでお酒好きという2つの面を持っています。『シンデレラガールズ』のアイドルって大体こんな感じで2つ以上の属性の掛け合わせなんですが、美人だけど親しみやすい楓さんというキャラクターは、最高の化学反応を起こしている一例ですね。

「白紙宣言」に浮足立つ346プロですが、楓さんは自身の信念に従って行動します。美城常務のいう大きな成果のためではなく、ファンの笑顔を最重視して行動するのです。ファンを笑顔にすることが、アイドルの仕事であることは、1stシーズンでシンデレラプロジェクトのメンバーも学んでいたことなのですが、こんな状況にあっても、その基本に忠実に突き進める楓さんの頼もしさったらないですね。

かつてnew generationsの3人は城ヶ崎美嘉に煌びやかなステージへ連れていってもらえましたが、あのときとは対照的に、楓さんのステージは小さなもの。それこそ、第6話で未央が愕然としたステージよりも小さいくらいに。しかし、そんな小さなステージであっても、楓さんは大量のうちわにサインを書き、自らが声を上げてファンの整列に協力し、最高のステージを披露します。大スターであっても、やっていることは未央たちと大差ないのです。違っていたのは彼女自身の「輝き」。スターたるもの、ステージの大小など関係なくキラキラと輝けるのです。


その輝きの原動力は魔法でもなんでもありません。ファンと一緒に階段を上ろうとする想いこそが、楓さんを支えている原動力なんですよね。未央たちにとっても、自分たちの方向性が間違っていないことを確認するまたとない機会になったことでしょう。川島さんと早苗さんに「大きな仕事をどうして蹴ったのか」と問い詰められても答えませんでしたが、凛の質問に答えていたのは、楽屋で現行プロジェクトを守りたいと語る場面を横目で見ていたので、自分と近い方向性を感じとっていたからなのかもしれません。

売れっ子になってもファンを最重視する信念と、ファンのために自分でできることは率先してやる行動力。このデキるアイドルスタイルを行動で示してみせるあたり、大物の風格ですね。楓さん、こんなに格好よくていいんでしょうか。

楓さんにとって、この舞台がかつて初めて立ったステージであることも大きいのでしょうけど、変わらない舞台に変わらないサイン、そして変わらないファンと楓さんの笑顔。「ファンと一緒に輝きたい」という信念は、今後のシンデレラプロジェクトにとっても共通の信念になりそうですね。部長の言っていたように、ファンの笑顔を最重視するところでPと似ているわけですし。

もしかしたら、部長は今回の仕事が初ステージと同じ場所であることも知っていたのかもしれませんね。部下のことをキッチリ把握している美城常務も知っていたのかもしれませんが、プロフィールの経歴が埋まりまくってるので書類には反映されていなかったのかも。知っていたとしても、小さな仕事には変わりないので同じことかもしれませんけど。

美城常務は意地悪な継母なのか?

童話の「シンデレラ」に沿っているなら美城常務は継母の役になるでしょう。実際、「白紙宣言」によってシンデレラプロジェクトのメンバーを汚い資料室に貶めているのですから、なかなかの悪役っぷりです。けれども今のところ、彼女は悪人にはみえないのですよね。というか、そもそも悪行をやってないといいますか。

まず、彼女は「白紙宣言」から急進的な改革を進めようとしますが、反対するPの意見を無視するのではなく、「代案を出せ」と促しているわけですから、話のできない人ではなさそうです。もちろん、期限はシビアに切られますけど、ビジネスですから当然です。そもそも、大きな利益のために急進的になっているわけですから、ここで足踏みされてしまっては本末転倒です。なので、代案を出せといっても代案が出てくるまで待つのではなく、自身の計画は押し進めるようです。アイドルたちが現在受けている仕事はそのまま継続って方針のようですから、それがそのままタイムリミットなのでしょう。

次に、楓さんについても、彼女を大きな舞台に抜擢しようと目論みますが、ちゃんと本人の承諾を得ようとしています。権力にモノをいわせて無理矢理に企画を通せそうな気もするのですが、そうはしなかったのですね。しかも、断られて元の仕事へ行ってしまっても、特にお咎めもないようですし、やっぱり話の通じる人なのではないかと。

気になるのは、美城常務がなぜ成果を急いでいるのか、という点。効率化を進めるのはビジネスとしては当然ではありますが、出社したら引っ越し業者が来てた、ってくらいですから、かなり強引で急ピッチです。彼女には何か急がなければならない理由があるのでしょうか。今回は、急ぎ成果を求める常務と地道に進もうとする楓さんが対照的に描かれていましたので、余計にそう感じてしまいましたね。そういえば前回、海外からの帰社にも関わらず、父親である会長にはメール連絡のみという描写がありましたが、これは単に効率優先の性格というだけでなく、何か因縁があるのかもしれません。…ないのかもしれません。

何にしても、悪役ポジションだけど悪行はやっていない美城常務の今後の行方は気になるところです。2ndシーズンの物語を動かすキーパーソンであることは間違いありませんし。「白紙宣言」で大きなインパクトを与えておきながら、自身の企画のために最初に選んだ楓さんにフラれて出鼻を挫かれてしまった美城常務の明日はどっちだ。

着々と布石を積み上げる卯月

行く末が気になる人といえばもう1人。1stシーズンに大きな谷がなかったことや、「アニマス」終盤での春香さんの扱いを考えると、後半に大爆発が予想される島村卯月さん。今回も布石になりそうな描写があったように思えます。卯月は第7話でシンデレラプロジェクト最大のピンチを救ったのですが、それは彼女が意図的に何かをしたというわけではなく、ブレない彼女の無自覚な振る舞いによって救われたにすぎません。今回も同じようなことが起きます。

後輩の加蓮と奈緒を前に、焦りをあらわにしてしまう未央と凛でしたが、いつもどおり「がんばります!」という卯月によって冷静さを取り戻すシーン。ここでの卯月の意見は、自分たちにやれることをやるべきだ、という至極真っ当なものですが、険悪な空気をなんとかしようと慌てふためいた末の言葉という感じで、考えて発した言葉という雰囲気ではありません。なので、ピンチを救っている自覚はないと思うんですよね。

そして、楽屋で企画を考えようという3人の中で、卯月だけは白紙のまま何も書けずにいました。企画書を書こうと言い出せる未央と、「急には出てこないよね」といいつつ少し書けている凛に挟まれて、卯月は何を思うのか。おそらく、無力感に苛まれているのではないのかと。彼女にとって、自然体の笑顔こそが最大の武器なのですが、今期は笑顔のために輝かなくてはならない、という次のステップに進みそうですから、そこに試練が待ち受けていそうな気がします。「新たな自分」とは、自然体のままの自分でいいのか、それとも変わらなくてはいけないのか。

思い起こせば、卯月は第1話で養成所を連れ出してくれる誰かを待っていた過去から現在に至るまで、周りに引っ張られてばかりで、自らの意志で行動を起こしたことはほとんどないんですよね。新OPにしても楓さんの行動力にしても、自らの意志で行動することが2ndシーズンのカギになりそうですから、物語の谷もそのあたりがポイントになるんじゃないかなと。

そういえば、1人で遅くまで企画書を作っているであろうPを思って346ビルを見上げる場面で、地面のタイルに書かれているのはハナショウブっぽいですね。季節外れの花をこうやって登場させるとは…。花言葉は「優しい心」「忍耐」、そして「あなたを信じています」。消え入りそうな声で「待っていてください」というPを素直に待つ卯月の心情と合致しそうですね。

ただし、第14話ではPとアイドルの支え合いが描かれており、今期のテーマがアイドルが自ら歩み出すことであるならば、ただ待つことは正解ではなさそうですよね。現に、この企画書はアイドルたちと協力することで完成しています。

資料室の灰かぶり姫

「シンデレラ」の和名は「灰かぶり姫」。埃だらけの部屋に貶められて掃除をしているのはまさに灰かぶりですね。new generationsが楓さんから多くを学ぶ中、残されたメンバーも自分たちにできることをやっていました。美波がリーダーシップを発揮すれば、きらりが続いて後押しする流れは、すでに1stシーズンで培われたチームワークが光りますね。杏の特等席が隅っこに追いやられていたのが気にかかりますが…段ボールに囲まれて寝るのか、それとも立ち上がるのか。

掃除をしつつ、自分たちの企画書を作成していたのです。企画書の作成は前期の第5話とも重なりますが、今回は個々にわがままを言っているのではなく、自分たちのため、Pのため、そして何よりファンのための企画が書かれているのでしょう。まだ内容はわかりませんが。

割烹着みたいな前川が給食当番にみえて仕方ない。けど、それはそれで似合ってるな前川ァ!とか思っていたんですけど…

新田さんは似合いすぎじゃないですかね。どこの若奥様ですか。いけませんよこれは。

ともあれ、Pが自信満々に提出していた企画書がどうなるかはまったくわかりません。というか、美城常務はプロダクションの方針の話をしていたと思うのですが、それに対してイベントの企画書を提出するというのは、微妙に噛み合っていないような…。たった1つのイベント企画で逆転ホームランになるのは簡単すぎる気もしますが、楓さんに断られたこともありますし、とりあえずPの企画を進めて様子見しよう、みたいな流れになるのでしょうか。常務も楓さんにフラれて出鼻を挫かれてしまったので、自身の企画も練り直しでしょうし。

物語とはまったく関係ありませんが、346プロって紙ベースでやりとりしてるんですよね。前回の常務も帰社時に書類をもらっていましたし、今回も書類を読んでいる最中にPから紙の企画書を渡されています。演出上のわかりやすさを優先しているだけでしょうけど、普通は社内サーバーにアップしてメールで連絡後に口頭で念押し、くらいですよねぇ。もちろん、劇としては常務とPが正面から向き合うことが重要ですから、そんなリアリティはどうでもいいんですけれども、21世紀も15年が経つ現代において紙ベースのやりとりは、なんといいますかこう、ムズムズしてしまって…すみません、やっぱどうでもいいですね。

さて、次回のサブタイトルは「The light shines in my heart.」、直訳すれば「心の中で光が輝く」でしょうか。新OPが『Shine!!』で、楓さんも輝いていたわけですから、「輝き」は今期のポイントになりそうですね。それにしてもこの背景、ウサミン星でしょうか? 前回の佐久間まゆ、今回の高垣楓に続いて、次回もシンデレラプロジェクト以外にスポットを当てつつ、メンバーが何かしらの影響を受けるような流れになると思われますが、果たして。

続く16話の考察と感想はこちらからどうぞ。

アニプレックス (2015-07-23)
売り上げランキング: 9
モバイルバージョンを終了