アニメ【シンデレラガールズ】16話の考察と感想と 心の中で輝く「個性」こそがウサミンパワーの原動力

個性派アイドル揃いの346プロダクションでしたが、美城常務の方針によって「個性」を否定されたアイドルたち。その代表としてスポットを当てられたのが崖っぷちアイドル・ウサミンこと安部菜々。第16話では、ウサミンと方向性の近い前川みくとの間で「個性」について掘り下げるエピソードになっており、Pの言う「個性を伸ばす」とはどういうことなのかが描かれているのです。

TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」オフィシャルサイト

華やかなプロジェクトルームから資料室へ移り、”灰かぶり”となったアイドルたちでしたが、プロデューサー(以下、P)はプロジェクトを継続すべく、新たな企画書を美城常務に提出した第15話。new generationsの3人も、高垣楓という現トップアイドルの先輩の活動を目の当たりにし、自分たちの進むべき方向が間違っていないと確認できたのです。童話「シンデレラ」における継母という悪役を一身に背負った美城常務は出鼻を挫かれた形になってしまいましたが、次なる一手は果たしてどのようなものなのか。

前回、第15話の考察と感想は以下よりどうぞ。

第16話のサブタイトルは「The light shines in my heart.」、直訳すれば「心の中で光が輝く」となります。背景の部屋からは安部菜々ことウサミンではないか、と予想されていましたが、後に公開された予告編では、予想通りウサミンが登場。しかし、ウサミンの曇った表情と悲しげなBGMに不安しか感じません。一体どうなってしまうのか。

崖っぷちアイドル・ウサミン

アイドルマスター シンデレラガールズ 16話 崖っぷちのウサミン

前回の楓さんに続いて、今回スポットが当てられたのは安部菜々です。彼女は声優アイドルを目指す自称・ウサミン星人(”永遠の”17歳)で、通称・ウサミン。アイドルの傍ら、ゲーム版ではメイド喫茶でバイトをしていましたが、アニメでは346プロダクション内のカフェでバイトをしている姿が描かれていました。アイドルとしては崖っぷちな感じですが、それでも真摯にウサミンパワーでがんばっちゃうのがウサミンなのです。

冒頭では、前回に大活躍した楓さんの看板やポスターがまぶしい街中から、一転して薄暗いウサミンハウスへ切り替わる落差から、彼女がまだ成功を収めていないことが暗示されています。年季の入っていそうな和室のアパート、楓さんとは対照的な小さなウサミンポスター、美顔ローラーに「老けない~」の帯がかけられた本、ダサジャージで目を擦る彼女はくたびれたアラサーのそれであり、トップアイドルとはあまりにもかけ離れた印象。やはりアニメでも崖っぷちな状況におかれているようですね。

落花生は東京から1時間の場所であるウサミン星に繋がるヒント。あと、CD「メルヘンデビュー」のジャケットはこちらの世界のモノと違ってスペース☆ウサミンっぽいですね。サインを書いているのは前回の楓さんとの対比もあるのでしょう。そこはトップも崖っぷちも変わりないのです。

多くのアイドルがスマートフォンであるのに対して、ウサミンはガラケーもといフィーチャーフォン、しかもアンテナのついてるタイプってかなりの年代モノなのでは…。こういう細かいところでウサミンの世代の描写というボディブローが打ちこまれています。つらい。ちなみにストラップは自称・天才のロボ発明アイドル、池袋晶葉製のウサちゃんロボ。ゲーム版のお月見イベント繋がりでしょうか。

かなりの崖っぷちにみえますが、アイドルの仕事もそれなりにもらえているようです。TVのバラエティー番組ではお天気コーナーを担当していたり、ゲーム販促のイメージキャラクターに採用されていたり。バラエティー番組では、川島さんが「ウサミンといえばこれよね~」とウサミンコールが定着していることをうかがわせており、なかなかの人気者のようにみえます。

しかし、ゲーム販促として彼女がTVに登場したとき、李衣菜が「へぇ、菜々ちゃん出てるんだ」と発言していることから、ウサミンがTVに出演することはまだ珍しいようです。とはいえ、このゲーム、電車内の吊り広告に「600万ダウンロード達成!」と書かれているので、相当のヒット作のはず。なので、これは大抜擢といえるかもしれません。かなり大きめのゲームショーで単独ステージももらえているわけですし。

ウサミンのおかれている状況は、長いこと地道に努力を重ねてきた結果、ようやくその成果が実りそうな兆しがみえつつあった、というところでしょうか。母親から「家に戻って花嫁修業でもしたらどう?」との留守電に「もうちょっとで夢、叶いそうだったのになぁ」と漏らしていることからも、そんな感じですね。永遠の17歳であっても、時計の針は容赦なく進み続けているわけです。美城常務の改革によってお城への道が断たれてしまいそうなとき、現れたのが前川みくでした。

心の内にて輝く光、それが「個性」

ウサミンと前川の共通点は、うさ耳にネコ耳といったケモ耳によるキャラ付けなので、この2人を出会わせるのは妥当な感じがします。今回のテーマとなっている「個性」のわかりやすいパーツとして描かれているのですが、ここで語られる「個性」の大事なところは、もう一歩掘り下げたところにあります。

たしかに、ウサミンを辞めて安部菜々としてステージに立ったとき、痛々しいほどのぎこちなさで誰だかわからなくなってしまうほどでしたし、ネコ耳にメガネという2段階の変身を残したデフォルト前川もオーラ皆無で誰だかわからない状態でした。しかし、耳をつけるだけで別人に!というアニメ的な記号の話ではないんですよね。


ウサミンにしても前川にしても、その他の「キャラ付け」をしているアイドルたちは、すべて自分で望んだ「キャラ付け」をやっているんですよね。事務所の方針で無理矢理やらされているのではなく、自ら望んでさまざまなキャラになっているのです。ウサミン星人もネコキャラも、メガネも忍者もサイキックも、みんな自分で望んだ姿なわけです。大事なのは、誰かに言われたのではなく、自分で望んだということ。だからこそ「個性」なのです。自らが望んだ姿で舞台に立てるからこそ、「本物の笑顔」によって輝ける…それが本作におけるアイドルの真骨頂ともいえるでしょう。

Pは、会社の方針変更による「キャラ付け」の否定に戸惑う前川を、ウサミンのゲームショーへと連れていきました。でも、2人を突き合せただけで楽屋から出ていくんですよね。Pのやり方は「個性を伸ばす方針」なのですが、「個性」は本人の内から生まれるべきものなので、自ら口を出したりしません。「個性」を重んじるということは、つまり自主性に任せることでもあるため、美城常務のいうように、非効率的なやり方にならざるをえないのです。けれども、ここで2人を合わせれば何かが起こるんじゃないか、と行動に出られるあたり、Pの有能っぷりがうかがえますね。結果的に、最高の化学変化を起こすわけですし。

ウサミンを目標として慕う前川ですから、2人の関係は道を同じくする先輩と後輩にみえます。もちろんその通りなのですが、それだけではなく、前川はウサミンのファンの1人としても描かれています。TVで共演したときは、一気に空気を変えたウサミンに「感動した」と熱くなっていましたし、ステージの前でウサミンコールを送る彼女はまさに熱烈なファンといえるでしょう。

前川のコールをキッカケにして、ゲームショーのステージは一変します。ファンの声がアイドルの笑顔を取り戻させ、アイドルの笑顔が観客を笑顔にして、一緒に輝く。『シンデレラガールズ』における成功とは、まさにこの流れなんですよね。うさ耳やネコ耳がないだけで誰だかわからなくなってしまう、というのはアニメの記号的な表現でしかありませんが、ステージで輝く姿は、ダサジャージで寝ていた彼女とは誰がどう見ても別人でしょう。「個性」は、これほどまでに人を変えてくれるのです。

それにしても、スタッフの人が万策尽きそうな声だったので不安になりましたが、めちゃくちゃ用意周到でしたね。

身体を痛めて涙目でも笑顔をキメてくれるプロフェッショナルなウサミンでしたが、最後には本当に涙目で笑顔になっていて…この展開は本当にグッときましたね。キャラ付けをやると決めたら徹底してやりきるプロ根性も、前川と共通しているんですよね。

美城常務の目指す場所とは

童話「シンデレラ」の継母として悪役を一手に担う美城常務ですが、相変わらず強引なだけで大した悪行は積んでいません。話のできる人物であることも相変わらずで、Pの企画もあっさり通ります。しかし、Pの企画が失敗しれば敵対勢力を黙らせることになり、成功すればそれはそれで問題のないこと、というのが常務の意図。失敗した場合はともかく、成功されちゃうと自身の手掛けるブランドイメージの転換に影響しそうな気もしますが、成功確率を低いと見積もっているのかも。「おとぎ話」扱いですしね。

ところで、企画書を提出するシーンで気になったのは、Pに当たる光の加減。本作は前期より、光と影を用いた演出が多く見られたのですが、半身だけ光の当たっている状態というのは珍しいですね。P自身は自信をもって企画書を作り上げたのでしょうけど、常務がどう出るのかがわからず、半信半疑な心境といったところなのでしょうか。

あと、光と影の演出といえば気になるところがもう1つ。346プロのロゴにかかる光と影ですね。斜陽のかかる346ロゴが何度か挿入されているのですが、15話の白紙宣言の会議(画像左)に比べると、今回のロゴ(画像右)は光の割合が増えているのですよね。(個性的なアイドルたちに方針の転換を言い渡すシーンで挿入されています。) 時計の演出のように、少しずつ陽が当たる面積が増えていくのでしょうか。

常務の話に戻りましょう。「個性」を伸ばすことで「本物の笑顔」を引き出そうとするPの企画を「おとぎ話」とあしらう常務ですが、自身の方針も「かつての芸能界のようなスター性」に「別世界のような物語性」と、こちらも負けず劣らず「おとぎ話」な印象。このイメージに当てはまりそうなアイドルは楓さんなのですが、もうすでにフラれているので、どうするつもりなのでしょうか。

今回、シンデレラプロジェクトの部屋に復活していた社訓の書かれた346プロのポスター、以前は社内の至るところで見かけたのですが、美城常務が来てからは黒字に白いロゴのポスターに貼り換えられているんですよね。

このポスターには、こんなことが書かれていました。

「新しい」アイドルのカタチ。

我々の求める、アイドルの理想像を追求します。

見つける、育てる。

グループのノウハウを生かした、多角的なスカウト活動、
それぞれの特性を生かす、独自の育成プログラム。

心を通わせる、感動の共有。

イメージに囚われない、多方面へのプロデュース展開、
活動の幅を広く求め、人々と感動を共有します。

そして、花開く。

346プロダクション

ここに書かれている346プロダクションの社訓は、バリバリに「個性」を伸ばす方針なんですよね。だからこそ、あれだけ人材豊富な状態になっているのでしょう。しかし、美城常務の方針はまったく違っています。というより、真逆といっていいかもしれません。一部の選ばれた人材によって、過去のイメージに近いスターを、適所と思われる舞台のみに送り出す…、すべて正反対ですよね。

ここまでは、美城常務の強引な改革に対して、Pたちが反旗を翻すような構図にみえていたのですが、むしろ会社に対して反旗を翻しているのは、常務の方なのかもしれません。社訓を決めているのは社内の上層部であると考えると、やはり美城常務は彼女の父親である会長に反抗しようとしているのではないかと。ただ、2人の間に何があったかはわからないので、何ともいえませんけれども。

常務のもとを訪れた部長は、急進的な改革に困惑する社員の代表としてだけではなく、彼女自身を心配している面もありそうでしたが、当の常務は「私には私の考えがありますので」とだけで、いまだ本心は不明のままです。いずれにしても、彼女の本当の狙いがどこにあるのかが2ndシーズンのカギであることは間違いなさそうですね。

戦力が増強されまくるシンデレラプロジェクト

強引な改革で社内を敵だらけにし、呼んだアイドルにはフラれ、キャラ付けをやめるように指示したのにキャラ付けのままステージを盛り上げられたり、散々な美城常務とは対照的に、一気に賑やかになるシンデレラプロジェクトルーム。ガチャ引きすぎでしょう、ちひろさんにいくら貢いだんですか。しかも常務とは違って、担当部署への根回しも忘れません。やっぱりPは有能です。といいますか、他社との打ち合わせ中に自社内でモメるのはやめてください…胃が痛くなりそうです…。

それにしても上条さん、あなたもこの枠なんですか。ブルーナポレオンはどうしたんですか。常務にメガネ盛ってベヨネッタなんて言ってたことがバレたとかそういうことですか。

こんなペースで人員が増強されていくと常務が四面楚歌ってレベルではなくなりそうです。これまでは島村さんが曇らされる展開を心配していましたが、なんだか常務も心配になってきました。だって常務の手札、何にもないですよね? そろそろ常務も何か成果を上げていただかないと、見ていてつらくなってきそうです。バラエティー番組のキャストからCandy Islandを外して野球どすえチームも隔週にしたと思ったら、よりバラエティー色の強いメンバーに変更した挙句、やっぱりバラエティー路線はなくしていくだなんて、迷走している感もありますし。

さて次回、第17話のサブタイトルは「Where does this road lead to?」、直訳すれば「この道はどこに通じているの?」でしょうか。ずいぶんと困惑の感じられる言葉ですね。次にスポットが当てられるのは誰なのか。

これまでは、第14話のスケジュール表とか、第15話のTV番組の方針変更のホワイトボードとか次回へのヒントとなっていました。今回はおそらくコレでしょうね。

体調管理を促す美波ときらりのメモ書き。誰かが風邪でもひくのでしょうか? 病弱なアイドルといえば…。

※2015/8/3追記
予想ハズレ…。考えてみれば加蓮と奈緒は凛と絡むでしょうから、もっと後半でしょうかね。

第17話の考察と感想はこちらからどうぞ。

安部菜々(CV:三宅麻理恵)
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