【Transistor】レビュー 美しいグラフィックと音楽に自由度の高さが魅力のアクションRPG

「Bastion」開発者が手掛けた新作アクションRPG『Transistor』を2周クリアしたのでレビュー。美しいグラフィックと音楽で描かれたSFな世界観と、スキルカスタマイズにバトルシステムの自由度が逸材な1本でした。ただし、ボクの英語力の低さからストーリーについては理解しきれず…。

『Transistor』を2周クリアしました。1周クリアに3~4時間程度で”強くてニューゲーム”があるため、2周クリアといっても10時間もかかっていません。ジャンルはアクションRPGですが、アクションゲームのように一気にクリアできるくらいの長さですね。

今回プレイしたのはSteamで配信されているPC版。多言語対応しているものの、残念ながら日本語には対応していません。かなりのテキスト量があるため、英語に自信がないとストーリーを把握できないでしょう。ボクは英語に不安しかないので、ストーリーをぼんやりとしか理解できていません。なので、今回はストーリーについての話はしません。…というか、できません。

Transistor – Launch Trailer – YouTube

ちなみに、ストーリーは主人公Redに男性が剣の中から彼女に語り掛ける形で進行します。各所に点在するターミナルやスキル説明などのテキストが物語や世界観を補足するようにもなっていますね。

美しいSF世界

『Transistor』の特徴はなんといってもこのグラフィックと音楽。色鮮やかなグラフィックは見ているだけでもワクワクします。あとクォータービューっていいですよね。ミニチュア感というか、そういうのは好きです。

Transistor 清涼感あるSF世界

SFでサイバーパンク的な世界観で、清潔感のあるグラフィックが独特なイメージを作り出しています。ゲーム中、生きた人間がほとんど登場しないことも、清潔感を超えて冷たく寂しい印象に繋がっているのかも。

音楽については、もともと「Bastion」でも高い評価を得ていましたが『Transistor』でも引き続きすばらしいクオリティに仕上がっています。サウンドトラックはWeb上で公開されているのでぜひ聴いておきましょう。これらの曲がこのグラフィックに乗せて流れてくるわけですからたまりません。ゲームの音楽はゲーム中で聴いてこそ、ってことを強く実感しました。

参考:【Transistor】ステキなサウンドトラックがBandCampとYouTubeで公開

記事中のスクリーンショットは特別にキレイなシーンだけを切り取っているわけではなく、ずっとこんな感じなのです。歩いているだけでも「値段分の価値はあった!」と思えるほどの満足感。なので、見た目や音楽が気になった人はイケると思います。が、日本語に対応していない上に膨大なテキスト量なので、諸手を挙げてオススメってわけにもいかないのが歯がゆいところですけど。

Transistor すばらしいビジュアル

一本道でひたすらバトルのシンプル進行

本作はストーリーだけでなくマップも分岐はほとんどなく、一本道な進行になっています。進んだ先々に現れる敵を倒しながらひたすら順路に沿って進む感じですね。脇道くらいはありますが、マップを探索してウロウロするとか、進行方向がわからずに迷うとかはほぼありません。謎解きなどもないです。

なので、アクションRPGというよりは「RPG要素のあるアクション」という印象。1周3~4時間くらいでクリアできて何周も遊べそうな作りなので、余計にそう感じるのかも。

Transistor 一本道進行だが…

ゲームの流れはシンプルそのもの。進める方向に進んだら敵が出てくるので倒す。敵を倒してレベルが上がったらスキルが増えるのでカスタマイズ。そしてまた進んだら敵が出てくる。これの繰り返しですね。

こんなふうに書くとなんだかつまらなそうに思われるかもしれません。しかし、『Transistor』のコアは、このバトルとカスタマイズにあるのです。要するに、コアの部分をガッチリ遊ばせるために、余計なものは全部削ぎ落とされているわけです。

自由度の高いバトルシステム

『Transistor』のコアはバトルとカスタマイズです。どちらもプレイヤーの持てる選択肢が非常に多く、かつ正解が1つではありません。この自由度の高さが本作の魅力といっていいでしょう。

まずバトル。プレイヤーも敵もリアルタイムに動き回るアクションです。4つのボタンに割り当てたスキルで攻撃しながら、走って弾を避けたり壁に隠れたりしながら戦います。で、これだけだと何の変哲もないアクションRPGっぽいですが、『Transistor』にはPlanningモードと呼ばれる独自システムがあります。

Transistor 時間停止して行動を指定するPlanningモード

Planningモードは発動すると周囲の時間が停止します。時間が止まっている間に行動を指定し、決定すると一気に行動を実行するというもの。Planningモードを使うことで、敵の後ろに回り込んでからコンボ、とか、狙いやすい位置に移動してから貫通攻撃で一閃、とか、行動の幅が一気に広がるわけです。

強力なPlanningモードですが制限もあります。指定できる行動はコストが決まっているので、強力なスキルを連打するとか、どこまでも移動するとかはできません。また、Planningモードを使った後は一定時間攻撃スキルが使えなくなるので、割と大きめのリスクがあります。なので、Planningモードの基本は敵を倒しきるか、攻撃してから距離をとるヒット&アウェイのどちらかになりますね。

プレイヤーの行動の幅を広げるPlanningモードは、それ自体が自由度を上げているシステムです。が、真に自由度が高いといえるのは、別にPlanningモードを使わなくてもいい、という選択肢があることです。

Transistor アクションだけでも進行可能

こういった独自システムは、その存在意義のために「使わざるを得ない状況」を作り出したりするものです。ゲームに慣れた人であればあるほど、こういう独自システムを目にすると「ああ、これを使わなきゃいけないのね」って思っちゃいますよね。結果的に独自システムを使うしかないのであれば、それは自由度が高いとはいえません。選ぶ必要のない選択肢は、選択肢として存在していないことと同じです。…いやそれは言いすぎかな。ともかく。

『Transistor』では、Planningモードという強烈な独自システムを実装しておきながら、別にこれを使わず、アクションだけでもクリアできるようになっているのです。Planningモードを使わないことが縛りプレイになるようなこともなく、かといってPlanningモードが無価値なシステムというわけでもない、絶妙な調整がなされているわけです。

なので、Planningモードをバリバリ使って進めてもいいし、アクションだけで進めてもいいのです。実際、ボクも1周目はPlanningモードをメインに進めていましたが、2周目はアクションメインに進めたりしました。独自システムを用意しつつ、それを使わなくてもいいプレイスタイルを許容するとは、なんという太っ腹なのか。

Transistor 自由度の高いバトル

とはいってみたものの、実際はシステムを理解できなかった人向けの救済措置なのかもしれませんけどね。どちらにしても、これだけ強烈な独自システムを使ってもいいし使わなくてもいい、という調整は非常に丁寧な作り込みを感じずにはいられません。

組み合わせが膨大なカスタマイズ

『Transistor』のもう1つのコアがカスタマイズ。スキルとスキルを組み合わせることで効果が変わっていくのですが、組み合わせの種類が非常に多くなっています。ちなみに、本作ではファンクションと呼ばれていますが、わかりやすいと思うのでスキルと書いてます。

スキルのスロットは4つで、それぞれ4つのボタンに割り当てられます。さらに、そのスキルに2つのアップグレードスロットがついています。アップグレードスロットにスキルを追加することで、さまざまな効果が得られます。どのスキルをどのスロットに挿すかは自由なので組み合わせのパターンは本当に膨大。

Transistor 複雑なカスタマイズシステム

組み合わせによる変化は、単に威力が上がるとかバッドステータス付与とかだけではありません。攻撃の射程や範囲など、アクションの変化もあるのです。たとえば、射程の長いレーザーに爆発系のスキルを組み合わせると、レーザーの着弾地点で爆風が発生するようになります。他にも、レーザーとゆっくりと進む弾を組み合わせると、レーザーの弾道にしばらく攻撃判定が残るようになったりも。

こんな感じのアクションの変化がスキルの組み合わせの数だけ用意されています。アップグレードスロットは2つですから、組み合わせのパターンは本当に膨大です。なのに、組み合わせた効果がちゃんと見た目に反映されるわけですから、いろいろな組み合わせを試行錯誤しているだけでも楽しい。

スキルのカスタマイズをするためのチェックポイントはバトルの1戦ごとに出現するほど頻繁に設置されています。1戦1戦試行錯誤してね、といわんばかり。でも実際、それが楽しいのだから思う存分楽しませてもらうまで。

Transistor スキルの数も多い

スキルのカスタマイズは攻撃スキル以外にも、守備的なパッシブスキルスロットもあります。こちらはアップグレードスロットはないものの、シールドをはったり特定の攻撃に耐性を持たせたりと効果はいろいろです。さらに、取得経験値などを高める代わりにリスクを背負うリミッターもあるので、カスタマイズの幅は本当に広いものになっています。

幅広い遊び方ができるアクションRPG

『Transistor』はバトルとカスタマイズの自由度の高さがあるので、人によっては印象が大きく異なるかもしれません。ある人は、非常に戦略的なRPGだというかもしれないし、ある人は、ガンガン攻めるアクションというかもしれません。そのくらい自由度が高い作りになっているわけです。

Transistor 幅広い遊び方ができる

バトルとカスタマイズを繰り返して試行錯誤するのが楽しいゲームなので、攻略サイトなどで真っ先に正解をとりにいく人には向いていないかもしれません。それでも英語に自信があるならストーリーを楽しめるとは思います。

“強くてニューゲーム”で周回できるのですが、2周目以降は敵の配置が換わっていて難易度も上がっているので退屈はしないはず。また、時間やスキルなどを制限されたチャレンジモード的なものもあるので、パズルのような詰め将棋を楽しむこともできます。ただ時間を要求するだけではないやり込み要素、って感じですね。

そんなわけで、『Transistor』は進行こそ一本道ですが、遊び方の幅が広いので、実に”遊べる”1本になっているのではないかと。広くオススメしたいタイトルなのですが、英語でかなりのテキスト量があり、ストーリーはともかくスキルの説明などは読めないと苦労することになりそうなので、英語のできる人か、覚悟のできている人にオススメします。

Supergiant Games | Official Web site for the creators of Bastion and Transistor.
Steam:Transistor