【Bloodstained: Ritual of the Night】レビュー 新たな悪魔の城は本家本元の”悪魔城”だった

ついにリリースされた『Bloodstained: Ritual of the Night』をレビュー。本作は探索型の2Dアクションで、いわゆる”メトロイドヴァニア”と呼ばれているジャンルのゲームです。といいますか、「悪魔城ドラキュラ」シリーズの本家本元である”IGA”こと五十嵐孝司氏が手掛けているので、キャッスルヴァニア直系の新作と考えるべきでしょう。実際、新作なのにどこかで見たことあるようなヤツらと見覚えのあるアクションで戦うことになります。これがデジャヴュ…!

難易度は控えめだけど死ぬときゃ死にます

『Bloodstained: RotN』は探索型2DアクションとしてはRPG要素の強いゲームになっています。ステータスやダメージが数値で表示され、レベルアップや装備でキャラクターを強化していく…、といった感じですね。もちろんアクションですからプレイヤーの腕も必要ですが、装備や回復アイテムでどうにかできる調整なので間口も広いといえるでしょう。難易度は比較的易しめではあるものの、初見では死ねるポイントも多々あるため油断はできません。特にオートセーブに対応していないため、探索が長引いたときの油断はダメ絶対。

各地に点在するセーブポイントのソファ。座ると「どっこいしょ」とか言います。

探索の基本はしらみつぶし

探索する城は地上から地下深くまで作られておりなかなかの広さ。探索を進めれば2段ジャンプや水中移動といったアクションが追加されていき、行動範囲が拡がっていくのもお馴染みですね。次にどこへ行くべきかわからなくなっても、大抵はマップの埋まっていない場所へ行けばどうにかなります。ややわかりづらくて詰まりそうになった場面も何度かありましたが、許容範囲かなと。ともあれ、新しいアクションで新しいエリアを探索していくことはすこぶる楽しいんですよ。

詰まることもあったけどボクは元気です。

悪魔が豊富ならアイテムも豊富

探索の楽しさを支えているのが敵の豊富さ。100種類以上いるんですよね。そしてそいつらすべてに何かしらのドロップアイテムが設定されています。装備の素材から料理の材料、完成品の一発ドロップまでさまざまですが、とにかく何かが設定されているのです。なので、なんの利益にもならないお邪魔虫はいません。悪魔の群れは宝の山というわけです。だから楽しいんですよ。これだけ多くの敵に膨大なアイテムを上手に振り分けているのはもう職人芸の域。やっぱ本家はすげえや。

すべての魔物に細やかに設定されたドロップアイテムたち。これはもう職人芸の域。

好きな武器を好きなだけ使おう

こうして手に入った素材アイテムから装備を作っていくのも楽しみの1つなのですが、武器の種類が多いのも本作の特徴です。剣や大剣、短剣に鞭、そして刀から銃までよりどりみどり。といっても、状況に応じて使い分けを強制されるわけではなく、好きな武器を好きなように使っていい調整になっています。自由とはこういうことか。もちろん、状況に合わせて使い分けた方が楽になる場面は多いのでしょうけども、この武器でなければ突破できないという場面はありません。この懐の深さもIGAヴァニアたる所以なのでしょうか。

個人的には大剣がお気に入り。大きいことはよいことだ。

悪魔の力も活用すべし

悪魔と戦っていく上でもう1つ重要になってくるのが「シャード」の存在。シャードは敵からドロップするスキルのことです。火の玉を放つようなものから悪魔を召喚して戦わせるもの、それから攻撃力や耐性を上げるパッシブなものまであります。まるで悪魔の特性を取り込むようなシステムとなっており、『Bloodstained: RotN』をもっとも特徴づけている要素ですね。シャードも武器と同じく種類が豊富で、かつ好きなものを好きに使っていいような調整になっています。なので、シャードを撃ちまくる魔法使いスタイルでも一切使わない脳筋スタイルでもOK。幅広い戦い方が可能です。

ゲーム進行に必要な追加アクションもシャード扱い。「インバート」は驚愕の”どこでも上下反転”。

こうして探索を重ね、素材アイテムを集めて装備やシャードを強化し、ボスのパターンを把握して攻略を進めれば、おのずとゲームクリアは近づいてくるでしょう。悪魔の城を崩壊させてめでたしめでたし。…なんですけれども、むしろここからが本番。セーブデータを引き継いでの2周目に乗り出してもよし、そのまま探索を続けてさらなる力を求めるもよし。ただ城を崩壊させるだけでは飽き足らず、一瞬で徹底的に叩き潰すための第二幕が始まるのです。

限界なんてない(なくはない)

『Bloodstained: RotN』の楽しさは際限のない強化。強力な武器や装備を作り、料理を食べてステータスを強化していけば別人のような強さを手に入れることができます。やがては命からがら逃げまわったエリアをダッシュで素通りできるようになり、かつて苦戦したボスも秒殺できるようになるのです。隠し部屋の強敵すら圧倒できるようになるともはや何と戦うための力かわからなくなってきますが、それでもまだ強化できたりします。そこに意味があるとかないとかはどうでもいいのです。強くなれるというのはそれだけで楽しいんですから。

やっぱり強いヴァルマンウェ(ヴァルマンウェではない)

快適ってすばらしい

強くなるためにはひたすら悪魔を狩ることになるわけですが、これがとことん快適なのも大きい。まず、倒した悪魔とそのドロップアイテムは悪魔図鑑に登録されていくし、アイテム図鑑から逆引きも可能なので欲しい素材の入手先を探すのがカンタン。それから目当ての悪魔を集中的に狩りたい場合、たいていは狩りやすい部屋がどこかに用意されているのもありがたいところ。それでもってマップ切替の早さが尋常ではないため、部屋から出たり入ったりすることで敵を復活させてスピーディに狩り続けられます。もうすべてが快適。なのでどんどん強化したくなるし図鑑も埋めたくなるわけです。

高速ダッシュやハイジャンプなどの追加でガンガン快適になる狩り。高速なマップ切替も嬉しい。

ブッ壊せることこそ真骨頂

こうして強化を続けていくと最終的にめちゃくちゃ強い武器やシャードを手にすることになるんですけど、これが本当にめちゃくちゃ強かったりします。それはもうチート紛いのレベル。たとえば、展開したまま自由に動ける盾とか無限に弾が撃てる帽子とか。「えっ? これ本当にいいの?」ってなるものもちょいちょいあります。しかしあるものは使っていいに決まっています。それにやっぱりハチャメチャな強さは楽しいものです。ただハチャメチャだというだけでなく、丁寧で精微に作られているゲームだからこそブッ壊すのがスーパー楽しいし、やり込みのご褒美として与えられた武器なんだから遠慮の必要もない。豪胆で太っ腹な作りですよね、これ。

チート紛いの装備も遠慮なく使ってよい。神様は何も禁止なんかしてない。

新たな悪魔の城を破壊せよ

そんなわけで『Bloodstained: RotN』、新たな「悪魔城」を待っていた人にとってはまさに夢が具現化したゲームとなっていることでしょう。そうでない人にとってもメトロイドヴァニアの起源の一端を垣間見る1本になるはず。昨今でもインディー界隈を中心になんだかんだで良質なタイトルが継続的に出ているジャンルなのですけれども、やはり本家は強いんだなとあらためて思い知らされました。ともあれ、このジャンルで間違いなくオススメできる1本です。歴戦のヴァンパイアキラーの人も新米シャードリンカーの人も、思う存分悪魔の城を破壊しようではありませんか。

新たな悪魔城はやっぱり悪魔城でした。安心して崩壊させましょう。