『ヴァルキリーエリュシオン』をクリアしたのでレビュー。「ヴァルキリー」シリーズの最新作はスタイリッシュ寄りのアクションゲームになっています。公式のジャンル表記は「アクションRPG」になっていますが、RPG要素は薄め。アクションとしては動かしていて気持ちいいゲームになっているのでオススメできるのですが、ストーリーには物足りなさも感じるのでストーリーを求める人にはオススメしかねるかも。
ちなみに、ボクは「ヴァルキリー」シリーズについては初代『ヴァルキリープロファイル』のみプレイ済みで他は未履修です。
ラグナロク真っ最中の北欧神話世界
過去作と同様、舞台は北欧神話をベースにしたものです。”ヴァルキリー”ですからね。ただし、時系列が異なります。初代『プロファイル』では最終戦争ラグナロクの前から始まっていましたが、『エリュシオン』ではラグナロクの終盤から開始となっています。具体的には、主神オーディンと神狼フェンリルが一戦交えた後で、両者ともに負傷して膠着状態になっているところからです。世界はすでに崩壊して残された人もわずか、神もこの2者のみというド終盤っぽいタイミングから始まります。ヴァルキリー的には「そんなタイミングで召喚されましても…」といった気がしないでもない。とはいえ、神様がやることですからね。神様ってやつは本当に…、いえ、なんでもありません。
最初から死んでるエインフェリアたち
そんな崩壊間近の世界でヴァルキリーのやるべきことは”魂の浄化”。不死者(アンデッド)たちを倒して浄化し、世界救済を目指すことになります。生きている人間はもうほとんど残っていないのでエインフェリア探しが目的じゃないんですね。ただ、使えそうな魂があったらエインフェリアとして使役していいよとオーディン様もおっしゃっておられるので、ちょくちょく仲間が増えていきます。
ここが本作のストーリーで物足りなさを感じるポイントで、エインフェリアたちは最初から死んでるんですよね。無念や後悔を残して死んでいく様を目の当たりにするわけではないんですよ。最初から死んでいるから死が描かれない。だから悲壮感が足りない。エインフェリアのキャラクターは「どう生きてどう死んだか」が大事だと思うので、物足りなさを感じてしまいます。補足として生前の様子はボイスドラマ形式で収録されてはいるのですが…。その場面を直接見せつけられるわけではないのでどうしても印象は薄くなってしまいます。
ストーリーは物足りないかも
ストーリーに物足りなさを感じるポイントはもう1つあって、それはボリュームです。4人のエインフェリアが揃ったらすぐに終盤って感じなので「えっ、もう終盤?」みたいになります。とはいえ、やれることがどんどん増えていくアクションゲームとしてはエインフェリアが揃った時点でほぼ頭打ちになるので、そこから間延びさせず飽きる前に畳んだと考えれば悪くないのかも。そうはいってもあんまり終盤っぽさのないまま終盤になるので、やっぱり物足りなさは否めません。前述のとおり、エインフェリアたちの描写も足りていないので、終盤に敵対するヤツらへの感情もイマイチ湧かず、薄味になってしまっているように思えました。
チャプター形式で進むアクションゲーム
ゲームはチャプター形式で進行します。1つのチャプターごとに新たなフィールドが用意されており、探索しながら順路に沿って進んでいく、という形式です。また、サブクエストも用意されていて、こちらはメインチャプター終了後に再度同じフィールドの一部を使って展開される形式になっています。脇道に宝箱や収集要素などもありますが、基本的には一本道ですね。ストーリー自体は終盤に選択肢と条件で分岐してマルチエンディングになっていますが、フィールドにおける順路は決まっている感じです。なので、アクションゲームという印象が強いですね。
RPG要素は薄め
アクションRPGと名打たれていますが、RPG要素は薄めです。ヴァルキリーを強化していくところはRPGっぽくもありますが、スキルツリーはツリーというほど枝分かれしておらず、強化に必要な素材も入手時期が決まっているので、選択肢はほぼありません。このチャプターで強化できるのはここまで!と決まっている感じですね。一応、どの能力から強化していくのかはプレイヤー次第なのですが、必要な素材は簡単に集まってすぐにそのチャプターでの限界になれるので、あまり攻略には影響しません。なので、RPGって感じはしませんね。ステージごとにやれることが増えていくアクションゲームという印象です。
スタイリッシュ寄りのハイスピードバトル
次にアクションについて。こちらはスタイリッシュでスピードのあるバトルができるのでかなり面白いです。スタミナゲージのような制限もなく、とにかく気持ちよく動き回れます。剣や槍でガスガス攻撃! 適当に回避! それからスキルを交えてドッカンドッカン! やはりアクションは気持ちよさが大事です。ひとしきり戦って敵を全滅させたら散らばったアイテムは勝手に吸い寄せられるし、回復もいっぱい落ちるので全快してさっさと次の戦いへと駆け出せる、という点でも快適。いいですね。
ヴァルキリーのアクションの特徴はソウルチェインの存在です。ロックオンした相手めがけて光の青い鎖(?)を撃ち出し、敵の懐へカッ飛んでいけるアクションです。感覚的には『FF15』の「シフト」が近いでしょうか。これがあるおかげでバトル中はビュンビュン移動できます。大型の敵の頭へ飛んでいくこともできるし、着地を挟まずに何度でも使えるので、思ったより幅広い動きが可能です。やはり神族、すごい。
ただ、壁際のカメラ視点はいただけません。壁際のカメラ視点というか、壁際になりやすいことが問題でしょうか。ヴァルキリーの機動性に対してフィールドが狭く、敵も壁際に行きやすい動きであることが問題のように思えます。バトル時だけでなく、移動時も狭い通路や階段などではカメラ視点の動きがしんどいので、もうちょっと広めにしておいてほしいところです。
召喚しながらワチャワチャ戦え!
最大の特徴はエインフェリアの存在。ずっと一緒に戦ってくれるのではなく、状況に応じて召喚していくスタイルになっています。エインフェリアたちには体力などはないので彼らの戦いぶりに気を配る必要はないのですが、重要なのは彼らの属性です。エインフェリアはそれぞれ雷や氷といった属性を担当しているのですが、ヴァルキリーの攻撃も召喚中のエインフェリアに応じて切り替え可能だからです。敵の弱点に応じて召喚していく必要があるということですね。簡単そうに見えますが敵の集団はたいてい属性がバラけているので意外と大変です。そんなわけで仲間が増えれば増えるほど忙しくなってワチャワチャしてきます。楽しいですね。
また、ゲームを進めるとエインフェリアをさまざまなタイミングで自動召喚できるようになってきます。たとえば通常攻撃のコンボ後とかジャストガード後とか、攻撃を食らってダウンさせられた後などにも設定できるようになります。こういった条件で召喚してもエインフェリアの属性に合わせてヴァルキリーの属性も切り替わるので、より一層ワチャワチャします。楽しいですね!
ほどほどで遊びやすい難易度
難易度は3段階から選択できるのですが、真ん中のノーマルではほどほどとなっています。属性を意識してエインフェリアを召喚したりスキルを使ったりしていれば問題なく進める感じですね。ただし、あまり雑に撃ちまくっていては召喚やスキルに使うゲージがなくなってしまうので、息切れしないようなペース配分は求められるかも。体力や各種ゲージは消費アイテムでも回復できますが、敵の撃破時にドロップするソウルでも回復できます。これらのソウルはジャストガードやジャスト回避でもドロップするので、特にボス戦などでは重要になります。とはいえ、消費アイテムを使えばゴリ押し気味でもなんとかなるんですけどね。そんな感じの遊びやすい難易度になっています。
ボリュームもほどほど
ゲームのボリュームもほどほどです。サブクエストを含めてすべてクリアして、トゥルーエンドを迎えても20時間前後です。アクションゲームとしてはちょうどいいけどRPGとしてはやや食い足りないくらいでしょうか。ただ、無料のアップデートが予告されており、作中に登場する黒いヴァルキリー・ヒルドを使えるゲームモードやクリア後の高難度タイムアタック・セラフィックゲートなど、いろいろ追加されるようです。そこまで含めるならばボリュームはもう少しありそうですね。
※2022/11/8追記 無料アップデートが配信されました。セラフィックゲートやヒルドを使えるモードはストーリークリア後に解放されます。
アクションゲームとしてはオススメ
そんなわけで『ヴァルキリーエリュシオン』、アクションゲームとしてはオススメですがストーリーを求めるならオススメしかねる内容でした。北欧神話をモチーフとした「ヴァルキリー」シリーズっぽさはあると思うのですが、エインフェリアたちの描写にしろ神々の描写にしろ、いろいろ足りてなくてノリきれなかったなという印象です。反面、アクションは気持ちよく動けて間違いなく楽しいのでアクションゲームとしてはオススメできます。さいわい、最初のチャプターの最後まで遊べてセーブデータも引き継げる体験版が配信されているので、気になった人は試してみましょう。