Steamのオータムセールで何を買おうかなーとストアを見ていた際、そういえばやってなかったなということで、いまさらですが『8番出口』を買いました。もうリリースから1年経ってるんですねぇ。時間の流れが早すぎて怖い。でもゲームの内容はそんなに怖くなかったです。というか、かなりの新感覚。なるほどこれはすごいぜ。
いまさら『8番出口』をやろうと思ったのは他にも理由がありまして。最近読んだ『ネット怪談の民俗学』(ハヤカワ新書)で言及されていたから、ってのもあるんですよね。といっても「バックルーム」や「リミナルスペース」の下りで少し触れられている程度なのですけれども。個人的にネット怪談の類はそれなりに詳しいつもりだったのですが、あくまで日本語のテキストベースのものが主で、英語圏から出てきた画像や動画ベースのものはさっぱりでした。なので、それらの影響を受けたという『8番出口』に俄然興味が出てきたわけです。ちなみに『ネット怪談の民俗学』は超おもしろ本なのでみんな読もうぜ。
通路は続くよ どこまでも
実際に『8番出口』をプレイしたんですが、まず導入部分がいいですね。なんの説明もなく地下通路から始まる。「バックルーム」にまつわる話も、突然知らない場所に放り込まれて出口のない建物内を彷徨う…みたいな感じですから、いきなり始まるってのはとても正しい気がします。また、なんの説明もなくと言いましたが、ゲームのルールはわかるようになっているので安心。チュートリアルをチュートリアルと言わずに体験させる、チュートリアル上手い系の作りですね。この時点で良作を予感させてくれます。
プレイヤーのやることは「異変を探す」こと。異変があれば引き返し、なければ進む。ただそれだけ。至極シンプルです。2択なんだから当てずっぽうでも5割は正解じゃん!と思いきや、1度でも間違うとふりだしに戻されてしまうルールになっており、8連続で正解がクリア条件になっています。つまり50%の8乗だから…0.4%くらい? ちゃんとやるしかねえな!
探すべき異変は、わかりやすいものはめちゃわかりやすいんですが、わかりにくいものはマジでわかりにくいです。初回クリアまでは10分程度でサクッといけたんですけど、すべての異変を見つけようとするとなかなか大変。(といっても1時間くらいですが) でも通路の張り紙であといくつ異変が残っているのか明示されているので、全部見つけたくなるんですよね。
間違い探しに没頭すると恐怖心が薄れる
で、楽しい間違い探しをやってるとですね、まったく怖くないんですよね。ストアページでは「ホラー」のタグも一応ついてるし、題材もしっかりホラーではあるんですけど、これといって怖くはない。むしろホラーっぽい異変はわかりやすいので「あからさますぎやろ!」って笑っちゃうくらいです。普通だったら恐怖の対象である怪異も、間違い探しの文脈だと「間違い、みーっけ!」になっちゃうわけですからね。間違い探しに没頭していると恐怖心が薄れるんだ…という新たな学びを得ました。
間違い探しが薄れると恐怖心が増す
『8番出口』から脱出したその足で『8番のりば』にも行ってきました。似たようなゲームかと思いきや、けっこう違いますね。間違い探しがメインだった『8番出口』に対して、こちらは異変に対処することがメイン。(間違い探しもあるけど) 異変があるかどうかではなく、出てきた異変をなんとかして突破する感じです。となると異変に正面から向き合うハメになるので、わりかし怖い思いをすることになります。しっかりホラーって印象ですね。ちゃんと怖いです。
電車の中で起こる異変、ということで雰囲気や演出はめちゃくちゃ良いんですけれども、『8番出口』のような新鮮味はないんですよね。普通にホラーって感じ。ホラーとしては悪くない…いやむしろかなり良いんですが、『8番出口』にあった独特の感触を求めてしまうとコレジャナイになってしまうのかも。というか、『8番出口』にあったホラーと間違い探しのバランスって、奇跡のバランスだったのかもしれません。でも前作と同じことをしてもそれこそ新鮮味はないでしょうから、ムズかしいですよねぇ。
怖さ控えめのホラーが好き
そんなわけで『8番出口』から『8番のりば』まで行ってきました。話題になるゲームには理由がある!という当たり前のことを再認識しつつ、ホラー+間違い探しという妙な取り合わせに新感覚を味わうことにもなりました。「バックルーム」や「リミナルスペース」のような題材をゲームにするとこうなるのか!と舌がグルグル巻きです。あと、怪談を題材にしつつもそれほど怖くない、ってのも個人的に好みのポイントなのかも。『Ghostwire: Tokyo』とかもそうでしたし。このくらいの塩梅の怖くないホラー(?)、もっと出ないかなぁ。