【ケロブラスター】とっても丁寧な作り込みが光るファミコン風2Dカエルアクション

『ケロブラスター』は「洞窟物語」の開発室Pixelが手掛けた新作アクションです。ファミコン風のかわいらしいドット絵とピコピコ感あふれるBGMが素敵な1本。ゲームの内容は、敵や罠の配置からボスのパターンまで、1つ1つ非常に丁寧な作り込みを感じる優等生タイトルに仕上がっています。

雨が降ればカエルの鳴き声が聞こえる季節になってきましたが、こちらのカエルもリリースされました。PC版とiOS版がありますが、今回ボクが遊んだのはPC版です。

『ケロブラスター』の主人公はサラリーマンのカエル。彼のお仕事は”掃除”です。ゴーストバスターズみたいなブラスターを背負って仕事に出かけるカエルを見ると「掃除ってそういう…」と思わざるを得ません。実際、彼の仕事は”黒いヤツら”をやっつけることなので、やっぱり”そういう掃除”なのです。

ゲームはジャンプ&ショットのオーソドックスな2Dプラットフォーマー。ステージクリア型でステージの最後にはボスが待ち受けています。ボスを倒せば新しい武器が手に入り、それらの武器を切り替えながら進めていくことになります。ステージとステージの合間にはかわいらしいキャラクターたちによるイベントパートも。全7ステージで2~3時間でクリアできるくらいのボリュームになっています。

【PLAYISM】ケロブラスター トレーラー 日本語 by 開発室 Pixel – YouTube

ファミコン風の見た目どおり、ファミコン世代の人たちにはお馴染みのスタイルなので、すんなり入っていけるはず。この手のゲームにあまり馴染みのない人であっても、入っていきやすいはずです。というのも、本作は非常に丁寧に作り込まれている親切設計なゲームだからです。

“超”がつくほど親切な作り

親切な作りといっても、ゲームの側からダラダラと説明をしてくれるわけではありません。むしろ、説明なんてほどんどありません。ゲームのメニューに説明書が用意されていますが、おそらくお世話になる必要はないでしょう。言葉による説明がなくても、ちゃんとプレイヤーに伝わるように作られているのです。

たとえば、ゲームを起動したときのタイトル画面。ロゴを汚している黒いヤツらを倒すことでゲームが開始されます。黒いヤツらはジャンプショットでは届かない場所にも配置されているので、上方向に撃てることも、ハシゴに登れることも確認できます。つまり、ここだけで操作説明とキー設定が完了するというわけ。お見事。

ケロブラスター 操作説明と設定を兼ねたタイトル画面

敵が上から降ってくることで、ここは上にも登れることをわからせたり、新しい武器を入手した直後にはその武器を使うべき場所が用意されていたり、とにかく親切設計。あくまでもプレイヤーに気付いてもらおうという仕掛けなので、こちらとしても気分よく遊ぶことができますね。

かつて「スーパーマリオブラザーズ」でもプレイヤーに気付かせるための仕掛けが施されていたわけですが、『ケロブラスター』においても同じような作り込みを感じます。敵やオブジェクトの1つ1つにちゃんと意味があるので、非常に丁寧に作られていることが伝わってきます。

理不尽はなくちょうどいい難易度

体験版的な位置づけの「PINK HOUR」では、最初から死にまくりの難易度であったため、バージョンアップで難易度が下げられるほどでしたが、本編である『ケロブラスター』はどうかというと、ムズかしすぎず、カンタンすぎず、ちょうどいいくらいではないでしょうか。

参考:【PINK HOUR】難易度を下げた新バージョンがリリース 差分をチェックしてみた

前述したように、親切な作りだとヌルくなってしまうのではないか、と思われるかもしれません。が、実際はそんなことはなく、割と死ねます。といっても、死にまくって死んで覚えろ、というほどでもありません。「PINK HOUR」の前バージョンのように、落下しまくって「ザンネン!」の嵐ってわけではないです。というか、落下死はほとんどなかったような。

ゲームの流れとして、武器の性能や敵の行動パターンをわからせるパートと、それらを把握した上で応用して突破するパートがある感じでしょうか。敵やトラップをどういうものか見せておいてから、その中を突破させるような流れなので、わからん殺し的な理不尽はあまりないのですよね。

たとえば、上から落ちてくるトラップ。最初に落ちてくるときはプレイヤーには届かないので「あっ、これ落ちてくるんだ」ってわからせてくれます。それ以降は注意するようになりますし、たとえ食らってしまってもトラップを見逃した自分のせいだとわかるので理不尽は感じません。開発者とプレイヤーがフェアな関係、って感じなんですよね。

とはいえ、ボスたちはそこまで親切には徹してくれません。戦いながら戦いの中で行動パターンを掴んでいくしかありません。ランダム性はあまりないパターンゲーなので、パターンを掴めるまでは割と死ねます。特に後半ステージのボスでは。しかし、どの攻撃にも必ず攻略法が用意されているので、ここでも理不尽はないですね。攻略法を作り上げていく過程はまさにアクションゲームの醍醐味。

残機が尽きてしまうとゲームオーバーでステージの最初に戻されてしまいます。が、所持金はそのままなので、ショップでパワーアップしてリベンジと洒落込めるわけです。何度も同じステージを進むのはちょっと面倒かもしれませんが、そうこうしているうちに上達するのも事実。さっきは苦労した場所もすんなり突破できるようになっている自分に気付けるのは快感のポイントであったりもします。

上達の実感できるアクションだが…

クリア後には2周目もあったりします。武器のパワーアップを引き継いだ状態なので、”強くてニューゲーム”といっていいでしょう。武器が強いこともあってサクサク進めるのですが、ステージの構成や敵のパターンを把握できていることがデカいでしょう。

本作はランダム性の薄いパターンゲーなので、1度パターンを把握してしまえば安定してクリアできます。逆に言えば、パターンを把握しないまま強引にクリアすることはムズかしいでしょう。なので、運よくクリアできた、なんてことはまずありません。クリアできた人は間違いなく上達しているわけです。

アクションゲームにおいて上達が実感できるのは非常に楽しい瞬間です。特に本作はパターンゲーなので、反射神経とか反応速度を問われることはありません。パターンを把握し、攻略法を確立していけば、ほとんどのプレイヤーが上達を実感できることでしょう。

しかし、攻略法を確立してしまうと、負ける要素のないゲームになってしまいます。約束された勝利は、それはそれで気持ちのいいものではありますが、どこか物足りないものでもあります。攻略パターンを確立していく楽しさと、確立した攻略法を用いてクリアする楽しさのうち、片方が欠けてしまう感じでしょうか。

攻略法の確立まで苦労すればするほど、その攻略法を用いてクリアする快感は大きくなるのですが、前述のように本作は非常に丁寧な作りなので、そこまでは苦労しない感じなのですよね。といっても、ボクはそこまでしんどい攻略は望まないのですけども。

本作のボリューム不足を指摘されるのは、ステージの長さや数の話ではなく、おそらくここなんじゃないかと。2~3時間でクリアできるので確かに短めですが、アクションゲームとしてはそんなもんかなと思います。しかし、クリアしてしまうとそれでゲームを消化しきった感じになっちゃうんですよね。丁寧な作りが仇になるなんで、贅沢すぎる話ではあります。「ゼルダの伝説」シリーズのように、記憶を消して遊びなおしたい、って思えるタイトルなんですよね。

一応、クリア後の要素としてボスラッシュのタイムアタックや2周目のみの隠し要素なんかもあります。このあたりはさらなる高みを目指す人用って感じでしょうか。個人的にはやり込み勢によるRTAに期待してます。

広くオススメできる優等生なアクション

そんなわけで『ケロブラスター』は非常に丁寧に作り込まれたファミコン風のアクションゲームでした。カエルが好きな方も嫌いな方も、というか、普段からゲームを嗜む人はもちろん、そうでない人でもイケそうな感じがします。尖った部分はないのですが、カッチリと仕上げられた優等生なタイトルではないかと。やや短いながらも、アクションゲームの楽しいところがギュッと凝縮されていると思います。

『ケロブラスター』のPC版はPlayismで配信されています。お値段は720円。サウンドトラックのケロリズムが500円ですが、セットだと1000円なのでお得になっています。iOS版は500円です。

Playism:ケロブラスター&ケロリズム
App Store:ケロブラスター

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