壁画を思わせるグラフィックが目を引く『Apotheon』は古代ギリシアの神話を舞台にしたメトロイドヴァニア系アクションです。ビジュアルとゲームシステムをマッチさせた世界観の構築は絶妙。が、アクションとしての完成度はもう一声欲しいところかも。
『Apotheon』をクリアしました。クリア時間は7時間弱。このジャンルのゲームとしてはほどよいボリュームではないでしょうか。
最初に情報を見たとき、そのビジュアルに一目惚れしてしまった本作。個性的なグラフィックでギリシア神話な世界観に合いすぎていてすばらしいですね。ちなみに、あちこちで「壁画風」と評されていますが、古代ギリシアにこんな感じの壁画ってあんまりなさそうなんですよね。どちらかといえば「壺絵風」なのではないでしょうか。
ギリシア神話ベースのメトロイドヴァニア系アクション
壁画か壺絵かはともかく、『Apotheon』のグラフィックは非常に独特。古代ギリシアの神話を舞台としていると聞けば、誰もが無言で頷くところではないでしょうか。オリンポス山を舞台にアポロだのアルテミスだのといった聞き覚えのある神々と戦って人類を守る、という物語になっています。
キャラクターのグラフィックだけでなく、背景やエフェクトなど、細部に至るまで古代絵風のビジュアルで統一されており、もうこれだけで世界観を見事に表現しているといっても過言ではないでしょう。実際に動かしてみても、実に”それっぽく”動いてくれるので感動します。
『Apotheon』はいわゆるメトロイドヴァニア系の2Dアクションです。『メトロイド』とか『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』(Castlevania: Symphony of the Night)とか、探索要素を含むアクションですね。いくつかに分けられたマップを探索して、それぞれに設定された目的を達成していく流れになっています。
メトロイドヴァニア系といっても謎解きやパズル要素はあまりなく、バトルがメインになっています。このバトルの部分もかなり独特になっていて、それが世界観を構築する一因にもなっています。
投げたら拾え!武器はすべて消耗品だ
剣や槍、棍棒から弓矢まで、多種多様な武器が登場する本作。この武器の扱いが独特なシステムになっています。
すべての武器に耐久値があり、使っているとそのうち壊れてロストしてしまいます。強力なレア武器であっても壊れてしまうのです。なので、できるだけ大事に使いたいと思うのが人情ですが、本作の仕様はむしろ逆。
『Apotheon』には武器を投擲できるシステムがあります。剣だろうが槍だろうが、敵に向かってブン投げて攻撃ができるのです。投げると武器の耐久値は減ってしまうものの、耐久値が残っていれば拾ってまた使うことができます。これは弓矢などにも該当するため、放った矢を拾ってまた使えたりします。
この投擲システムは敵も使ってくるのですが、敵の投げた武器も拾って使うことができるため、戦場はさながら雪合戦状態。一戦交えた後には武器が散乱することになり、自分のブン投げた武器を拾いながら「オレ、何やってるんだろう…」と我に返ること間違いなし。
武器は消耗品ですが、そこらじゅうで拾えるので困ることはありません。むしろ、ケチケチしている方が苦戦します。ブンブン投げてガンガン拾う、それが『Apotheon』流なのです。古代ギリシアでこんな戦術がまかり通っていたかどうかは知りませんが、なんとなく”それっぽく”感じさせる要因になっています。
アクションの作り込みにやや甘さも
『Apotheon』はバトルがメインで進行しますが、アクションにイマイチなところがいくつかあり、ちょっと惜しいと感じもします。
たとえば、少しの傾斜があるたびに引っかかるように止まるダッシュとか、当たり判定が見た目通りすぎて互いに空振りの交錯を繰り返してしまう攻撃とか、画面外から攻撃してくる敵とか。調整が甘いのではないかと感じてしまう部分がいくつかありました。
また、本作の体力システムは体力とアーマーの2段階制になっており、回復アイテムも大量に手に入るのでそうそう死ぬことはありません。大体ゴリ押しで進めるため、難易度はそれほど高くないといっていいでしょう。
難易度が高くないのは別にいいのですが、「ノーダメージで切り抜ける”正解”はあるのだろうか?」と疑問に感じる場面も少なくありません。たとえば、ボスのポセイドン戦は船の上で戦うことになるのですが、船ごと上空に突き上げられて落下ダメージ、なんて場面があります。海の中はザコ敵だらけなので飛び込むわけにもいかず、船以外の足場もなく、ダメージを受け入れるしかなかったのですが、ボクの攻略がヌルいだけなのでしょうか…。
ゴリ押しで進めてしまうこととゴリ押し以外に方法がないことは違うと思うのですよね。ボス戦などで長期戦になれば回復アイテムがドロップする救済措置もあるので”ハマり”はないと思いますが、開発者が正解を用意できていない裏返しなのではないかと疑いたくなります。といっても、ボクの攻略がヌルいだけかもしれないのですけど。
ギリシア神話なビジュアルを自分で動かせる喜び
そんなわけで『Apotheon』は作り込みの甘さもあるものの、このビジュアルとゲームシステムでギリシア神話系の世界観を絶妙に構築したタイトルでもあります。画面の中の絵を動かせるというビデオゲームの根本的な楽しさを改めて体感させてくれるゲームかもしれません。
インディーゲームの中でも2Dアクションとかメトロイドヴァニア系とかはいろいろと選択肢の豊富な状態です。なので、アクション面についてやや辛口になってしまいましたが、ビジュアル面で差別化を図り、世界観にマッチしたゲームシステムを作り上げているのは間違いありません。このグラフィックが気になったのであれば、プレイする価値アリかと思います。
公式サイト:Apotheon | ApotheonGame.com
Steam:Steam:Apotheon