【アサシンクリード4 ブラックフラッグ】レビュー カリブの海賊の黄金時代を追体験するオープンワールド海賊アクション

今更ですが『アサシンクリード4 ブラックフラッグ』をやったらめちゃくちゃ楽しめたのでレビューなど。アサシンとしてステルスメインのミッションをこなすオープンワールドであるところは想像どおりでしたが、カリブの海賊として海戦や略奪といった海賊生活を満喫しつつ、18世紀初頭の海賊の黄金時代を舞台に歴史の証人となるストーリーが素晴らしい仕上がりでありました。

なぜ今『アサシンクリード4 ブラックフラッグ』なのかといえば、先日のSteamのサマーセールで買っていたからです。久々に3Dのアクションゲームがやりたかったところなんですよね。実のところ、「アサシンクリード」シリーズに触れるのはこれが初。これまで外野からみていた印象では、タイトルによって評価がマチマチなシリーズなので、いまから1本やるならどれだろうか?と評判をみて『4』に決めました。

結果的にめちゃくちゃ楽しめたので大正解だったと思うのですが、この勢いで他タイトルまで手を伸ばしてしまうと、評価がマチマチな理由を実感させられそうなので、また今度ということで。といいますか、『4』の大ボリュームに大満足しているところなので満腹でもう食べられません。

個人的な「アサシンクリード」のイメージは、オープンワールドのアクションゲームでフード被ったアサシンが屋根から屋根を飛び回ってカッコよくザックザクに殺陣をキメてくれる、ってな感じでした。実際にプレイしてみると、このイメージ自体は間違いではなかったのですが、もっとも楽しめたのはストーリーでした。すごくいい意味で裏切られましたね、本当に。

公式サイト:Assassin’s Creed 4 BLACK FLAG – アサシン クリードIV ブラック フラッグ | トップページ | Ubisoft

海賊の黄金時代を追体験するストーリー

アサシンクリード4 ブラックフラッグ バーソロミュー・ロバーツ

「アサシンクリード」シリーズは、故人のDNAを利用してその人の人生をバーチャルで追体験できる技術が開発されている世界設定になっています。プレイヤーは、この技術を使ってゲームを作っている会社で働いており、ゲームで使う歴史的な瞬間の撮影のために仮想世界へ接続している、という設定ですね。

プレイヤーが追体験するのは、秘宝を求めてカリブ海を冒険する海賊・エドワード・ケンウェイ。時代設定は18世紀初頭で、いわゆる海賊の黄金時代の真っ只中です。ケンウェイは架空の人物ですが、彼の出会う海賊たちは実在した海賊たちばかり。”黒髭”ことエドワード・サッチからバーソロミュー・ロバーツといった伝説級の海賊から、『パイレーツオブカリビアン』のジャック・スパロウ船長のモデルとなったキャラコ・ジャック・ラカムまで、まさに海賊オールスターの大感謝祭。年代的に海賊キッドは出てきませんが(死んでるので)、息子を名乗る人物が出てくる上に、その正体が実は…、なんて展開も。

実在の海賊たちによって繰り広げられるストーリーは、史実に基づいたものになっています。故人のDNAを通して過去を追体験しているだけなので、歴史介入モノではありませんが、歴史の証人になっている感覚がありますね。どの海賊も、彼らが歴史に名を残した代表的なエピソードを絡めて描かれています。たとえば、女海賊のメアリ・リードが男装だったとか、同じく女海賊のアン・ボニーとともに裁判で絞首刑を言い渡されたとき、妊娠していることを訴えたとか、史実どおりのエピソードが登場します。

それぞれのエピソードがバラバラのパーツとして存在しているのではなく、主人公・ケンウェイの存在によってキレイに繋がっていくのが素晴らしい。チャールズ・ヴェインと一緒に漂流した船員が実はケンウェイだっただなんて、なんとも素敵じゃないですか。海賊の歴史なんて学校では習わないのであまり馴染みがないかもしれませんが、Wikipediaにザッと目を通しておくだけでも楽しさが全然違うので、ぜひ読んでおきましょう。人物欄だけでもよいので。

参考:カリブ海の海賊 (歴史) – Wikipedia

本作のストーリーは史実をなぞるだけではありません。ストーリーの大筋は、ケンウェイという架空の人物を通して体験する海賊の歴史なのですが、それは表の一面にすぎません。もう1つの面として、歴史の裏側に潜むアサシン教団とテンプル騎士の戦いが描かれています。こちらは古代文明の遺産を巡る争いで、漫画『スプリガン』みたいな超古代文明のオーパーツの奪い合いですね。その戦いは人知れず現代に至るまで続いているので、現代から故人の追体験をしているプレイヤーにも絡んでくるわけです。

ケンウェイの探し求めた秘宝「観測所」がまさにオーパーツ。主人公の勤める会社は、表向きはゲーム作りのために海賊の血わき肉踊る冒険を撮影していますが、真の目的は秘宝探し、という裏の顔を持っているわけです。この二重構造が先の気になる展開を生み出しているのですよね。この構造は「アサシンクリード」シリーズ全編を繋ぐ役割のようなので、シリーズファンにとってはたまらないものなのでしょう。といっての、シリーズをやっていないボクにとっても求心力は十分でしたね。

おれたちゃ海賊 略奪がお仕事

舞台はカリブ海で時代は海賊の黄金時代、主人公は海賊なのだから、ゲームの内容も当然、海賊モノになっています。大海原というオープンワールドでの移動手段は、馬でも自動車でもなく船です。しかし、ゲームの世界でだだっ広い海を船で移動する、ってあんまりいいイメージがないんですよね。『ゼルダの伝説 風のタクト』でも、広大な海を移動するのはちょっとダルかった思い出です。でも、広くないと海っぽくないですし、ムズかしいところですよね。

さて、本作においてはどうなのか、といえば、たしかに移動手段だけと考えるとややダルさはあります。が、そこは海賊ですから、海賊としてのお仕事が海にいっぱい浮かんでいるわけです。略奪すべき金と酒を積んだ商船や軍艦がそこらじゅうに行きかっているのだから、退屈している場合じゃない。

小型船から大型の軍艦までよりどりみどりですが、デカくて強い船の方が報酬もデカくなっています。得られる報酬はお金だけでなく、船の強化に必要な素材もあるので、略奪はかなり重要です。特にストーリー終盤の海戦はガチでキツイので、船の強化は必須。だから素材の略奪も必須なのです。戦う前にどの船が何を所持しているかを望遠鏡で確認できるのもフレンドリーでいいですね。

船と船による海戦もゲーム化するとかったるい内容になってしまいそうですが、意外とテンポよく進むバトルに仕上げられています。船の装備は向きに依存しており、前方へは船首砲、後方へは樽爆雷、そして側面には大量の側砲による攻撃となります。本命は側砲ですが、敵に対して側面を向けることは被弾面積を増やすことになり、ハイリスクハイリターンな攻防を生み出しています。結果的にレーダーを見ながら敵の周りをぐるぐるしがちで、「エースコンバット」シリーズのようなプレイ感もありますが、側砲の一斉射で敵船をハチの巣にする感覚は独特の快感アリ。

船にケンカを売るのは略奪が目的なので撃沈はしません。面倒なら沈めちゃってもいいんですけれども。戦闘不能になるまで耐久値を削ったら、ここからが海賊の本領発揮。敵の船に乗り込んで制圧です。甲板上で2本の剣とピストルで大立ち回り。時にはマストに登って旗を切り落として勝利宣言など、パーフェクトに海賊行為。制圧が完了すれば、あとは煮るなり焼くなり。気分はマジで海賊です。

他にも、サメやクジラを狩ったり、沈没船に潜ってお宝を探したりと、海賊の仕事は幅広く用意されています。目的地に到着するまでにうっかり寄り道をしてしまおうものなら、いつの間にか時間が吸われていた、なんて毎度のこと。オープンワールドとしてプレイヤーがやれることは多く用意されているので、海の上で退屈することはありませんでした。というか、あまりに膨大なので、退屈する前に満腹になれます。

ステルスだけどアサシンだから暗殺してもいいよねっ

主人公が海賊とはいえ、ストーリーのメインは陸の上で進みます。こっちの方が「アサシンクリード」としてのメインでもありますね。主人公のケンウェイはアサシンみたいな動きのできる海賊であってアサシンではないのですが、細かいことはいいでしょう。

ミッションのメインはステルスですが、個人的にステルスゲームってあまり好きではなかったりします。というのも、隠れて敵が動くのを待っている時間、主導権をずっとゲーム側に握られているような感覚がどうにも苦手なんですよね。隠れているより無限バンダナで撃ちまくっているときの方が楽しめているので、どうも向いてないんじゃないかと。

本作においては、たしかに敵が動くのを待つ時間は存在しますが、草陰から敵をザクザク倒して主導権をこちら側へ持ってこられるのですよね。アサシンですから、殺傷行為が否定されていないわけです。いいんですよ、やっちゃって。最終的には人っ子一人いない警戒地域を悠々と闊歩できる…アサシンの大勝利である。敵に発見されてもチャンバラすればいいだけで、ペナルティも小さめなのがいいですね。

ミッション以外で丘の上でやるべきことは探索ですね。どのエリアでも、まずは高台に上ってシンクロすることでマップが手に入ります。なんとかは高いところが好きといいますけど、この手のゲームって意味もなく高い場所に上りたくなるもの。そこへきて、本作では高台に上る意味がちゃんとあるんですよね。

で、マップを入手すると無数の収集アイテムが表示されるようになります。この手の収集要素は苦手なのでうんざりさせられるわけですが、本作が巧妙なのは、収集アイテムの総数をエリアごとに分けているところです。たとえば、全エリアでの総数は100個だったとしても、現在のエリアには5個だけ、とか。「そのくらいならついでに回収しておくか」って気分なりますし、1つのエリアをコンプリートしておくと、次のエリアもコンプすっか、ってなっちゃうんですよね。

頭に付けた釣り竿に垂らされたアンパンのごとく、短期的な目標設定に踊らされているうちに、いつの間にか時間が吸われていた、なんて毎度のこと。まっすぐクリアするだけのつもりが、気がついたらマヤのカギやテンプル騎士のカギをコンプリートしていた…何を言っているかわからねー…こともないけど、30時間を軽く超えてしまったプレイ時間からはちょっと目を背けたくなりました。

海にも陸にも膨大なボリュームで遊べる要素が詰め込まれている本作ですが、それでもやがて終わりはやってきます。歴史に忠実ですから、その先が時代の終わりであるとはわかっていても、先の気になるストーリーの求心力には勝てません。

黄金時代の終焉がゲームの終幕

本作の時代設定は海賊の黄金時代と書きましたが、正しくはその黄金時代の終焉まで。史実に忠実なので、かつて友人だった海賊たちも次々に倒れていきますし、バハマ総督のウッズ・ロジャーズにより海賊の拠点・ナッソーから海賊たちが追放され、次第にその勢いを失っていきます。わかっていたこととはいえ、あれだけ楽しく輝いていた海賊の時代が終わっていくのがなんとも切ない。膨大なボリュームであるが故に、その物語を終えたときの虚脱感も大きく、また、心地の良いものであります。なんといいますか、大作は斯くあるべし!といった印象かもしれません。

そんなわけで、一足先にカリブの海で夏のバカンスを満喫してきたのですが、日本の夏は暑すぎるので、もうちょっとだけカリブ海にイーグルダイブしてていいですかね。いいですよね。このアニムス、全然涼しくありませんけど。

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