【真・女神転生4 FINAL】レビュー 予想以上の新作感で遊びやすくなった『真4』最終形態

『真・女神転生4 FINAL』(以下『真4F』)をクリアできたのでレビューなど。1周クリアするだけで50時間以上かかったのでボリュームは前作と同じかそれ以上。無印『真・女神転生4』(以下『真4』)と同じ世界観で、ベースとなるゲームシステムも同じなので、「たいして変わってなくね?」と思いながらはじめたのですが、やってみれば納得の”完全新作”でした。

http://megaten4f.jp/

『真4F』は前作『真4』から派生したタイトルで、『真4』のニュートラルルートの終盤を舞台として、新たな主人公によるストーリーが展開されます。基本システムは前作から変わらず、会話で敵を仲魔にして合体で強化してプレスターンバトルで弱点を突いて行動回数を増やして一方的にボコったりボコられたりして全滅するシステムですね。本作をプレイする人のほとんどが前作経験者でしょうから、すんなり馴染めることでしょう。しかし、あまりにもそのまんまではないか?という疑問がなくもない。

たしかに、公式ブログで紹介されている前作からの変更点をみただけでは、「細かく改善されてるのはわかるけど、どこらへんが”完全新作”なのか」といった印象かもしれません。実際にプレイしてみると、これらの細かい改善点が積み重なった結果、かなり遊びやすくなっていることがわかります。紹介されていること以外にも、移動中の視点がやや後ろに引いて、敵シンボルが積極的にこちらへ向かってこなくなったため、探索がしやすくなっていたりもします。

とはいえ、細かい改善点がいくら積み重なったところで、”完全新作”を謳うのは無理があるんじゃないか、と思われるかもしれません。確かにそのとおりで、それはまた別の要素です。『真4F』を”完全新作”としているのは「バランス調整」と「ストーリー」の2点です。

歪な調整からマイルドな難易度に…死ねるけど

前作『真4』の問題点の1つは、バランス調整でした。序盤は強烈な難易度でプレイヤーを迎えてくれるのですが、中盤以降はそれほどでもない難易度に落ち着いてしまい、ゲームのコンセプトが一貫していない印象すらありました。具体的にはミノタウロスとメデューサあたりはガチガチに対策しないと突破できないのに、それ以降は出たとこ勝負でなんとかなってしまうあたり。仲魔の育成の幅が広がる中盤以降は調整しきれなかったのかもしれません。

その反省からか、『真4F』では大幅に調整が入っています。具体的な調整内容として、全悪魔の能力が変更されています。序盤の強烈な難易度は鳴りを潜め、ゲームが進むに従って尻上がりに難易度が上がっていくようになりました。全体的にマイルドになった印象です。といっても、プレスターンバトルの性質上、いつでもどこでもサクっと全滅できるので、決してカンタンになったというわけではありません。全滅しても無料で復活できるFree to Deathのため、「じゃあいくら殺してもいいよね」とばかりに殺意満々。なのでご安心あれ。

真・女神転生4 FINAL 何度でも死ねます

プレイ感に変化をもたらせているのは新要素「スキル適性」の存在。スキルの得手・不得手が生まれたことで、悪魔の個性がより際立つようになりました。悪魔合体で好きなスキルを選んで継承できるので、なんでもできる仲魔を作れてしまっていましたが、今回はより適性に特化したスキル構成を考える必要があります。不得手なスキルを継承しても効果が低い上に消費も大きくなるので、得意なスキルで固めて特化した方が使えるというわけです。

ただ、特化していくと属性が噛み合わない敵と遭遇したときに苦労させられそうですが、ここで万能に近い救済が用意されています。ハマ、ムド系の魔法です。いつもは即死魔法でしたが、今回はダメージ魔法になり、ニヤリ時に即死効果が付与されるように変更され、使い勝手が大幅に上がりました。耐性をもつ悪魔も少ないし、先制でニヤリになることもあるため、ザコ処理にもってこい。ボス戦でもダメージ源や弱点狙いで使えるので、困ったらコレ!というくらい便利。

ハマ、ムド系以外にも、ニヤリ時のみ追加効果が発生するスキルは他にもいろいろあります。特に固有スキルに多いので、ここでも個性が際立ちます。ただでさえ強力なニヤリがさらに強化されることになり、プレスターンバトルにおけるリスクとリターンが跳ね上がっているので、さらにスリリングになったといえるでしょう。

とはいえ、プレイヤーが仲魔を特化する方針で進めていると、どうしてもどこかに”穴”ができてしまいます。後半になればなるほど、ボスの弱点は減り、耐性は増え、使ってくる攻撃の属性も増えていくので、すべての穴を塞ぐのは大変。ですが、後述のパートナーシステムもあり、ガチガチの対策をしなくても突破できるので、ちょうどいい湯加減といえるでしょう。最終的なことを言ってしまうと「耐性?知るかバカ!そんなことより貫通だ!」になるんですけれども。

いつもの3属性の分岐ではないストーリー

『真4F』を”完全新作”としているもう1つの要素がストーリーです。前情報だけみていると、前作終盤の展開を第三者視点で体験するのだろうか?と思っていたのですが、まったく違いました。完全に新規の展開が用意されています。さらに、「女神転生」シリーズのお約束を少し捻った内容になっているため、これはまさしく”完全新作”といえるかも。

「女神転生」シリーズのストーリーといえば、選択肢によってカオス、ロウ、ニュートラルの3つの属性に分岐していくのが特徴でした。今回も分岐はあるのですが、いつもの3属性とはちょっと違います。一応、カオスとロウも選べるっちゃ選べるのですが、オマケ程度で本筋ではありません。『真4F』では、ニュートラルルートの中でさらに一歩踏み込んだ展開になっています。神と悪魔のどっちにつくのか、ではなく、神も悪魔もブッ殺す前提で人間としてどう進むか、ってところがテーマなので、従来の「女神転生」とは趣が異なっています。

今回は人間が中心なので、人間の仲間が多く登場します。前作にも一緒に行動しているキャラクターが援護してくれるシステムはありましたが、さらに進化したパートナーシステムとなりました。行動をともにしている仲間のうちの1人を選んで毎ターン援護してもらえる上、ゲージが溜まれば全員で一斉攻撃してくれるので非常に強力。そんなわけで、今回はメガテンらしからぬ(?)大所帯での行動なので、イベントシーンはたいへん賑やかで愉快なものに。

ただ、楽しい仲間たちだからこそ、分岐する選択肢で迷うことがあまりないんですよね。双方の言ってることに一理ある、とか、両方とも狂ってるけどマシなのはどっちか、とかではなく、こっちしかないっしょ、って感じで、プレイヤーを迷わせてくれないのはやや残念。(どっちの結末を見ようかという迷いはあるけど) 仲間と共に進むか、孤高の道を歩むのか、って分岐なのですが、仲間がみんないいヤツすぎて突き放す行動を選びづらすぎる…。ともあれ、前作『真4』からさらに踏み込んで完結する内容はまさに『FINAL』なので、前作経験者はぜひとも見届けてほしいところ。

あと、前作では分岐するルートごとに情報が散りばめられていて、全容を把握しづらい世界観になっていましたが、今回はそのあたりもわかりやすくなっています。ハンターメモと呼ばれる設定テキストをいつでも参照できるのもありがたいところ。というか、今作は悪魔全書の解説や遺物へのコメントなどを含め、テキスト量がすさまじいことになっていて読み応えあり。

ただしラストダンジョン、テメーはダメだ

ここからちょっと苦言。概ね楽しめた今作ですが、これだけは言わせていただきたい。それはラストダンジョンについて。物語の壮大なスケールに負けないくらいの広さで圧倒してくるのですが、圧倒的につまらなかったです。それまで楽しめていた気分が台無しになるくらいにはダメな内容でした。

まず、広いんだけど広いだけで密度はスカスカなこと。淡々と走り続けるばかりで感情が刺激されるポイントがさっぱりない。本当にただ広いだけ。次に、敵との会話が成立しないため、仲魔を増やしたり合体したりすることもなくプレイに変化がないこと。本作のおもしろいところをわざわざ切り捨てているので、そりゃあ楽しくないというもの。こうして単調なマラソン状態が延々と数時間も続くのだから、それまでの熱気が一気に冷めてしまいました。ラスボス戦ではその強さもあって盛り返しましたが…。ストーリーや世界観としては正しいかもしれませんが、ゲーム的には大間違いではないかと。

“これだけ”といっておきながら何ですが、ついでにもう1つ今作からの要素でどうかと思うのがトラップホール。これは探索中に突然出現するランダムワープの罠で、連打で振り切ることが可能というもの。ダンジョンにおける事故要素なのですが、そこまで必死に連打しなくても振り切れるため、特に事故が起きず、ただダルいだけになってしまっています。もちろん厳しい連打を要求されるのは願い下げですが、現状ではハッキリいって機能していません。ランダムな要素でプレイに変化をもたらせたかったのでしょうけど、その意図であれば完全に失敗しています。

“FINAL”にふさわしい『真4』最終形態

前作からすべてにおいてパワーアップして最終形態となった『真・女神転生4 FINAL』は、バージョンアップや完全版というわけではなく、間違いなく新作なのでバッチリ遊ばせてくれます。完全体とまではいえないかもしれませんが、ほぼパーフェクトな内容といっていいでしょう。特に前作が気に入った人なら間違いなく楽しめるはず。

クリア後も引き継ぎありの2周目や強力な”魔人”(今回は普通に会えるようになった)など、遊べる要素がたっぷり詰まっているので長く遊べる1本となりそうです。というか、1周するだけで50時間超なのだから、それだけでも十分なボリュームなのですけれども。なんにしても、本作とのおつきあいはもうしばらく続きそう。というわけで、今後ともよろしく…。

アトラス (2016-02-10)
売り上げランキング: 36
モバイルバージョンを終了