『Moonlighter』をクリアしたのでレビュー。本作は商人としてダンジョンに挑み、拾ったアイテムの自分の店で売りさばいていくという、アクションとショップ経営を組み合わせたハイブリッドなゲームです。パッと見た印象のとおり、細やかに動きまくるドット絵が抜群に美しく、シームレスに変化するBGMも大変素晴らしい…のですが、肝心のゲームはというと、アクションもショップ経営も残念ながら今一歩といった印象。なんといいますか、非常に惜しい一本となっております。
ダンジョンにお金を求めるのは間違っているだろうか
主人公・ウィルはダンジョンの入り口にできた村でショップを営む商人です。店の売り物はダンジョンの収集品。というわけで、今日も今日とてダンジョンに挑みます。
ダンジョンは3つのフロアからなっており、最深部にはボスが待ち構えています。ボスを倒せば新たなダンジョンへの扉が開き、4種類のダンジョンを突破した先で最終ボスとの決戦になります。ダンジョンの内部は入るたびに毎回変化するランダムなもの。謎解きなどは一切なく、基本は敵とのバトルのみです。
商人だけど前転すれば無敵
バトルは武器を使った攻撃と前転による回避がメインとなっています。武器は5種類ありますが同時に装備できるのは2種類。状況に応じて切り替えながら戦っていきます。ウィルは商人なのであまり派手なアクションはできませんが、前転の性能は優秀なので意外と軽快に動けます。動ける商人はなかなか強い。ちょくちょく首を傾げたくなるような当たり判定も見られますが、前転してれば大体オッケーです。
呪い「カバンの中は整理整頓せよ」
ランダムなダンジョンにはもちろん宝箱もあります。何か特別なアイテムを期待してしまうかもしれませんが、残念ながら入っているのは収集アイテムと大差ないです。といっても比較的高価なアイテムが多いですけれども。問題なのは、多くのアイテムに呪いがかけられていること。呪いといってもダメージを受けたり死んでしまったりするわけではありません。そういうのはミミックの仕事です。(ミミックはいます、しかもだいたい強い) 『Moonlighter』における呪いとは、インベントリを侵す呪いとなっております。
ウィルの背負っているでかいカバンには20種類のアイテムが入ります。20種類も入る?いやいや20種類しか入らないんですよ。インベントリは5×4で構成されており、最上段の1列は死んでもドロップしない保険がかかっています。高価なアイテムを拾ったら早いとこ最上段へ寄せておきましょう。これがデキる商人スタイルです。カバンの中を整理していないと死んだときに全部ブチまけてしょんぼりすることになってしまいます。
で、呪いのアイテムですが、こいつらはインベントリ内で自由に配置できないようになっています。具体的には、端っこにしか置けないとか、隣のアイテムを破壊してしまうとか。なので、整理しながらカバンに詰め込んでいかなくてはなりません。なんという面倒くささ。誰ですかこんな微妙な呪いで嫌がらせをしようと考えたのは。中には、隣のアイテムを別のアイテムに変えてしまうとか、即座にショップへ転送してくれるとか、ややお得な呪い(?)もあるのですけれども。インベントリという何気ないところにゲームっぽい要素を入れようという意図はわかります。が、ほぼデメリットのみでただ面倒なだけになってしまっているのはいかがなものかと。
お会計は退出時になります
ともあれ、カバンがパンパンになるまでアイテムを拾ったら死ぬ前に帰りましょう。ダンジョンに入った瞬間から入り口は閉じてしまうので、脱出するにはお金を払って転送するしかありません。入場料はタダですが、退場するにはお金がかかるということです。なんて時代だ。といっても、バトル中でもお構いなしに転送できるのでかなり便利なんですけれども。なんにせよ、無事に持ち帰ったアイテムを売れば収支は黒になるので問題ありません。死んで持ち帰れなかったとしても、その場合は転送料金はとられないのでやっぱり問題ありません。あれ?実はやさしい世界?
健全な商売は適正価格の把握から
さて、ダンジョンから帰ったらショップの経営です。持ち帰ったアイテムを売りさばきましょう。ウィルの仕事は収集アイテムに値段をつけて棚に並べること、そして店を開いて客を待つことです。値段は自由に設定できますが、高すぎるともちろん売れませんし、安すぎると損失になってしまいます。客の顔色をみて適正な価格を探っていくのが商売のコツといえるでしょう。適正価格で販売すれば客も笑顔でニコニコショッピング。これが健全な商売というもの。
『Moonlighter』におけるショップ経営はこれだけ。価格を調整して適正価格を見つけるのみです。価格は変動しないので一度適正な価格を把握してしまえば、後はその値段で売り出すだけ。それでも最初のうちは商売してる感があって楽しめるでしょう。でも、わかってしまえば、収集アイテムを売るのに手間が増やされているだけ、という感も否めなくなってきます。店番を退屈させないようにと気を使ってくれたのか、万引きNPCから商品を守る仕事もあるのですが、これまたプレイヤーにはデメリットしか生まない要素になってしまっています。いかがなものかと。
お金は投資してこそ未来が拓ける
ともあれ、こうやって稼いだお金をどう使うのかが攻略のカギになっています。装備を強化したり回復アイテムを買い込んだりしてダンジョン探索を進めるもよし。ショップを拡張したり設備に投資したりして増益を狙うもよし。マネーイズパワーですが商人だから当然です。特にゲーム開始当初は村に鍛冶屋やアイテム屋すらありませんから、彼らを誘致して村そのものを拡張するところからになります。勝手によそ者を村に入れちゃっていいんでしょうか。
装備の強化もショップの拡張も、段階ごとに価格が桁違いになっていくので一気に進めるのは厳しくなっています。進めたければ次のダンジョンに進むことです。ダンジョンごとに拾えるアイテムは異なり、値段も桁違いになっていくので収入が一気に増えるからです。特に装備品の強化はお金だけでなく素材も必要になるのですが、素材は先のダンジョンでなければ手に入らないため、お金を貯めて一気に強い武器というわけにはいきません。
進行の段階次第でどうしてもやれることが限られてしまうので、プレイヤーの選択肢はあんまりなく自由度はイマイチな印象。選べるのはせいぜいメイン武器をどれにするかとか、防具を重装にするか軽装にするかとか、そのくらいでしょうか。あとは華麗に前転しまくって戦うか、お金の力に任せてゴリ押しするか、といったスタイルの違いも出るといえば出るかも。
お金で解決できる問題はお金で解決しましょう
お金の使い道は前述のダンジョンから出るときの転送料金ですが、もう少しお金を積めば中継地点を設置することも可能です。主な使い方としてはボス部屋の前にゲートを開いてから挑戦とか。他にも消耗品でフロアをスキップしてしまえるアイテムなどもあるし、回復のポーションをカバンいっぱいに詰め込んでいくこともできますから、ダンジョンをお金の力で攻略することが可能となっています。ポーションをがぶ飲みしながらボスを殴っていると「本当にこれでいいんだろうか…」と不安にならなくもないのですが、たぶん大丈夫でしょう。なんといっても商人ですからね。お金で解決するのは正道…のはず。たぶん。
商売楽ありゃ苦もあるさ
そんなわけで『Moonlighter』は商人が商人としてダンジョンを突破していくゲームでした。高価なアイテムをカバンに詰め込むために安物を次々に捨てながらダンジョンを進んだり、持ち帰ったアイテムに値段をつけて客の顔色をうかがったりしているときなどは”商人してる感”があると思います。
ただし、商人の生活が楽しめるのは最初だけで、慣れれば慣れるほど退屈になってきてしまうのも事実。楽しいばかりじゃないよね、仕事だものね。ここが楽しめる人は根っからの商売人なのかもしれませんが、どうやらボクはそうではなかったようです。とはいえ、苦痛になるほど長い時間がかかるわけではなく、ほどほどのボリュームなのでそれほど心配はしなくていいかもしれません。たまには商人もいいかな?と思われたのならレッツ商人ライフ。