勢いあまって3周クリアした『コードヴェイン』をレビュー。本作はいわゆる”ソウルライク”なアクションRPGとなっています。内容もかなりソウルシリーズに寄せてあるのですが、独自要素のおかげでキッチリ差別化できている印象です。難易度はソウルシリーズに比べるとやや控えめなので「死にゲー」というほどではありませんが、死ぬときはあっさり死ねるので決してカンタンというわけでもありません。ボクにとってはちょうどよい難易度だったので心地よく遊び続けてしまったのですが、ソウルライクであるということと独自要素の数々がやや人を選ぶんじゃないかなという気はします。個人的にはかなり好き。
これが本当の”ソウルライク”
ガードや回避を駆使して痛い攻撃をやりすごしつつ敵の背後を狙って立ち回る…、そんな基本からしてソウルライクなアクションになっています。もちろん攻撃も回避もスタミナを消費するのでスタミナ管理も必須。敵の攻撃にタイミングをあわせての「受け流し」や背後から大ダメージを与える「バックアタック」も完備。ソウルを感じます。
敵を倒して得られる経験値兼お金のソウルもとい「ヘイズ」は死亡時にその場にドロップし、もう一度そこまで行けば回収可能という仕様も、HPの回復アイテムは回数制でセーブポイントの「ヤドリギ」で補充できるという仕様もかなりそのまんま。ソウルを感じずにはいられません。さまざまなゲームのレビューにおいてソウルライクソウルライク言いすぎだという批判を目にしたこともありますが、これをソウルライクと言わずして何をソウルライクと言うのか、というくらいにはソウルライクです。
キミはひとりじゃない
ここからが本題。じゃあどこで差別化しているのか?というと、本作最大のウリである「バディ」システム。一緒に戦ってくれるNPCを1人連れていけるシステムです。勝手に動いて勝手に戦ってくれるのですがこれがなかなか強い。プレイヤーを引き立たせるため変に弱くされていたりはせず、肩を並べて戦える強さになっているのです。背中を任せられるからこそ「バディ」というわけですね。頼りになる味方ってステキ。
ただし、強いといっても強すぎるわけでもなく、あまり任せすぎると死んでしまうので「あいつだけでいいんじゃないかな」とまではいきません。とはいえ、足を引っ張ることもないのでストレスにもならず、かといって存在感がないわけでもなく、むしろ強さで存在感をバリバリアピールできているので”いい感じ”の調整なんじゃないかなーという印象です。
相棒だからいっぱいしゃべります
バディの作り込みを感じるのが探索時のセリフの数々。めっちゃしゃべります。汎用セリフだろうと思われるものも多いのですが、専用で用意されてそうなセリフもかなり多いと感じました。たとえば「”上の”ヤドリギで休んでいきますか?」とか「道が”右と下に”分かれていますね」とか、何気ないけどそれってこの場所専用のセリフだよね!?という感じ。何度も驚かされます。他にも、変な形状の敵にツッコミを入れたり複雑なマップにちょっと疲れをみせたり、プレイヤーの気持ちを代弁をしてくれるあたりもクスりとさせられます。こういったところからもバディシステムが本作のキモとして注力されているのだなと感じます。よくできてます、ホントに。
付け替えカンタンでいろいろ試せるビルド
個人的に『コードヴェイン』の好きなところはビルド関連。「コード」と呼ばれるクラスとコードごとに付随するスキルの組み合わせによってビルドします。スキルは熟練度を上げることで他のコードでも使えるようになるため、ビルドの幅はなかなかのもの。コードやスキルの付け替えはいつでも可能なのでいろいろ試しながらゲームを進めていけるのがいいですね。
ビルドといえば忘れてはいけないのが装備。こちらは武器2種と牙装と呼ばれる防具1種の組み合わせになっています。武器はそれぞれ性能が違うだけでなく、同じカテゴリであっても細かくモーションが違っているので用途が違ったりします。最大まで強化してやればどれも最後まで通用する性能になるため、こちらも選択肢は幅広いですね。
一方、牙装は単に防具というわけではなく、攻撃にも使える装備となっています。受け流しのモーションやタイミングも牙装依存。ですが、数値的にみてそれほど選択肢が多くはない印象かも。物理型ならコレ、スキル型ならコレ、といった感じで絞られちゃうんですよね。実際、マルチプレイでも牙装はかなり被ります。同じ装備でも色違いが用意されていることとキャラクターエディットがあることで見た目が完全に被ることはないですけど。
吸血鬼でもオシャレしたい
アニメ調のビジュアルも本作の特徴ですが、そのビジュアルでキャラクターエディットができるのもうれしいところ。顔や声などはゲーム開始時にしかエディットできませんが、髪型や服装は後からでも変更が可能です。なので、装備と合わせて服やアクセサリを変えたりできます。身だしなみを整えてオシャレになりましょう。
服は種類は少ないようでパーツごとに着脱やカラーの変更ができるので意外といろいろできます。アクセサリにいたっては装着する位置やサイズの変更も可能なので工夫次第でかなり幅広いエディットができそう…なのですが、コスト制でつけられる数が制限されているのでなかなかムズかしいかも。特定のキャラクターを再現するのは厳しそうですが美男美女を作るだけならカンタン、といった感じのキャラクターエディットになっています。
もう1人いる!
本作はオンラインでのマルチプレイにも対応しています。「救援」として誰かを呼ぶか、呼ばれるかで共闘ができるシステムになっています。救援として呼ばれた側はバディを連れていけないのでプレイヤー2人とNPC1人の計3人での共闘となります。終了条件はそのエリアのボスを撃破するか、ホストが死亡するかとなっており、ゲストが死んだ場合はゲストが離脱するだけでホスト側でのゲームは継続します。
モーションやスタンプを組み合わせたエモーション機能も用意されていますが、実際に使えるのは合流したときの挨拶くらいで突然のお別れになってしまうことが多いですね。だからこそゆるい繋がりで気楽にやれている側面もあるので一概の悪いことだとも思いませんけど。むしろ個人的にはこれくらいが好きです。
やや問題なのはマッチング。救援を呼んだ場合はすぐに誰かしら来てくれますが、呼ばれる側だとなかなか入れないことが多くなっています。ソロでも強力なバディがいるため、救援を呼ぶまでもなく突破できているのでしょうか。呼ばれるのはだいたい難易度の上がった周回プレイっぽい部屋ですし。なんにせよ、需要と供給のバランスがとれていないのかもしれません。共闘そのものはかなり楽しいだけにもったいない…。
ストーリーの見せ方はいいけれど
正直にいうとあんまり期待していなかったんですが予想外に楽しめたのがストーリー。閉鎖的な環境の中で生きるために戦っている吸血鬼(レブナント)の人々が描かれているのですが、彼らは心臓さえ無事ならリスポン可能な実質不死の身体と引き換えに、記憶がこぼれ落ちてしまっているという設定になっています。こうした人々の記憶の欠片を辿ることで展開するのが『コードヴェイン』のストーリーなのです。で、逸材なのはその見せ方。
記憶の中をプレイヤーが実際に歩いて辿っていく形式になっているんですよ。これがなかなか響きます。また、プレイヤー自身も記憶を失っているという設定なんですけど、これもプレイヤー=主人公とするためだけの設定ではなく、ちゃんとストーリーに絡む展開になっているんですよね。唸らされました。
ちょっと引っかかったのがストーリー上の選択肢。本作はマルチエンディングになっており、選択肢によって結末が変化します。その選択肢というのは、登場人物を生かすか死なせるかといったものなんですけど、どのシーンでも一通りお別れを済ませた後に選択肢がやってくるんですよね。おかげで悲しいお別れのシーンが台無しに。気まずい。気まずすぎる。お別れシーンの前の段階で選ばせて展開が分岐するわけにはいかなかったんでしょうか…。
あと、こうした記憶を辿るシーンやカットシーンなど、全体的にゆったりしたテンポで進行するのも難点でしょうか。記憶の中ではダッシュができず歩きのみ、セリフもボタンで送れないのでちょっとじれったい。カットシーンでの会話も演技のせいではなく、セリフとセリフの間が妙に長くて進行が遅く感じるんですよね。たとえば、あるキャラクターが何か問いかけて主人公が頷くというシーンだと、問いかけから反応までにやや間があり、さらに頷く動作もゆったりしているので間延びした印象を受けてしまいました。カットシーン自体も長いのでもう少し短めに抑えてくれたらなーという気がしないでもない。
探索における最大の敵はマップ
敵との戦いだけでなく探索も本作の楽しみの1つ。マップはどこも凝った作りをしていて探索し甲斐があります。特に前述の記憶の欠片にあたる「血英」の収集はスキルの解放条件にもなっているため、探索する価値も十分。
探索自体は楽しいのですが問題なのはマップ表示の仕様。マップ上に足跡を表示してくれるのでどちらから来たのかはわかりやすくて大変よいのですが、高低差に対してあまりに無力な仕様なため、階層構造の複雑な場所では迷いまくります。ミニマップの回転を止める設定もないため(※アップデートで追加予定であることはアナウンス済み)、本当に迷いやすい。凝った構造なのはいいんですけど、迷う理由がマップ表示の仕様なので納得感も薄いんですよね。要改善かと。
一味違ったソウルライクは相棒と共に
そんなわけで『コードヴェイン』は思いっきりソウルライクな内容でありながらバディをはじめとした独自要素でキッチリ差別化ができているゲームとなっていました。NPCを1人連れていけるだけでこんなにもプレイ感が変わるのだなと思います。ここまで書いてきた以外にも、背後まで届く敵の攻撃や狭い場所で乱戦になった場合のカメラアングルといった細かい難点もあるっちゃあるのですけれども、少し違った切り口をもつソウルライクとして楽しめる1本になっているのではないかと。