【スカーレットネクサス】レビュー

『スカーレットネクサス』をクリアしたのでレビュー。本作は超脳力(not超能力)を駆使して戦うスタイリッシュなアクションゲームで、気持ちよく快適に遊べる作りが素晴らしい1本でした。一方、2人の主人公によってそれぞれの視点から繰り広げられるストーリーは”引き”の強さこそ光るものの、全体を俯瞰してみるとややモヤってしまう面も。とはいえ、アクションゲームとしての質は本物なので「あーなんか手軽に気持ちよくなりてぇ…」って人に超絶オススメ。もちろん、なんでもいいから念力でモノを持ち上げて誰かにぶつけたいぞって人にもオススメです。

公式サイト:SCARLET NEXUS

超能力ではなく超”脳”力の世界

『スカーレットネクサス』の世界は「怪異」と呼ばれる異形の怪物たちに脅かされている世界で、プレイヤーは「怪伐軍」の一員となって怪異に立ち向かっていくことになります。人々は生まれながらに「脳力」を持っていて、その中でも特に優れた者達が怪伐軍として戦う役割を担っている、といった感じ。実は街中にいっぱい浮かんでいる投影型ディスプレイも脳力のおかげで視認できるもので、それが当たり前になっている世界なのです。ちなみに、脳力は基本的に先天的なもので1人につき1種類までとなっています。能力バトルの世界じゃ常識ですね。

スタイリッシュ念力アクション

主人公は男性のユイトと女性のカサネの2人から選ぶことになります。どちらも脳力は「念力」で、何かしら持ち上げて敵にぶつけるスタイルとなっています。武器による通常攻撃から念力攻撃に派生したり、念力攻撃から通常攻撃に繋いだりすることも可能。こうして通常攻撃と念力攻撃を交互に繋いでいくのが『スカーレットネクサス』の基本となります。これ、念力を使う際に自動でバックステップして距離を取ったり、念力から通常攻撃に派生する際は自動で前にダッシュして距離を詰めてくれたりするのが偉いんですよね。おかげで適当に攻撃と念力を繰り返しているだけでなんだかスタイリッシュに動いてくれます。やったぜ。

仲間と繋がる脳力

脳力は1人1種類と書きましたが、「SAS(Struggle Arms System)」と呼ばれるシステムで接続することによって一時的に他人の脳力を借りることもできます。発火脳力を借りて攻撃に炎を付与したり、瞬間移動脳力を借りて敵の背後に回ったり、臨機応変な戦い方が可能になっています。ゲームが進めば2つ以上の脳力を同時に借りることも可能になるため、加速脳力で周りをスローにしつつ分身しながら電撃を叩き込む、なんてことも。制限時間いっぱいまで使い切ると長めのチャージタイムが発生してしまうので都度切断していく運用が求められますが、ガンガン使った方がカッコイイのでガンガン使いましょう。カッコイイので。

繋がりたければ仲良くしましょう

2人の主人公はどちらも同じ念力の脳力者ですが、武器が違うことやスキルツリーの違いから若干プレイ感が異なります。また、仲間として行動を共にするキャラクターたちも違うため、SASで借りられる脳力も異なります。といっても、基本となる念力は同じなのでまったく別のゲームというほどではありません。片方が動かせればもう片方もすんなり動かせるようになるでしょう。

ともあれ、武器のアップグレードやスキルツリーによる強化だけでなく、仲間たちと仲良くなることで恩恵が得られる要素もあります。仲良くなるとSASの効果が上がるだけでなく、攻撃を直接アシストしてくれるなどアクションも増えていきます。なので、戦力を上げたければ話を聞いてあげたりメッセージに忘れず返信してあげたりプレゼントをあげたりしましょう。隊長の仕事は大変です。でも敵対している人にホイホイ会いに行ってお茶してるのはどうかと思います。

実は難易度控えめ

この手のスタイリッシュなアクションは難易度お高めのイメージがあるかもしれませんが、本作は意外と低め。まったく死なないわけではありませんが、潤沢な回復アイテムのおかげで難所と呼べる場所はありません。(※個人の感覚です) また、キャラクターもキビキビ動きますが見た目の印象ほどゲーム展開が早くないことも難易度を下げている要因かもしれません。誤解のないように補足しておくと、キャラクターの動きそのものは速いんですよ。でも攻撃や念力など1つ1つのアクションにかかる時間はそれなりにウェイトがあるという感じ。たとえば、通常攻撃の1段1段が多段ヒットする攻撃にしていたり念力を使う前にバックステップしたりですね。そうすることで動きは速いけど展開は抑えめになっているわけです。でも適度な忙しさもあって動かしていて気持ちいいので絶妙な調整なのではないかと。

アクションの快適さは◎

本作でもっとも素晴らしいのは快適さ。まずカメラ視点によるストレスがほとんどないんですよ。理由の1つは戦いのフィールドが広めになっているからで、壁際で視点がぐちゃってワケわかんなくなる状況はほぼありません。カメラ視点がやや引き気味になっていることも理由でしょう。あとはロックオン対象への張り付き方もうまく調整されているのだと思います。とにかくカメラ視点のストレスがない、こんなに嬉しいことはない。

それから、念力で飛ばせるモノがそこらじゅうに転がっているにも関わらず、走り回っていても引っかかることがなくて快適ってのもあります。多くはフィールドの端っこに配置されているのですが、中には中央に置かれている場合もあり、けれどもまったく邪魔にならないんですよね。いろいろと細やかな配慮が積み重なってストレスのないプレイ感に繋がっているのだと思います。

2人の視点から展開されるストーリー

本作のストーリーは静止画ベースのカットシーンで進行します。どうして静止画?動かないの?と思われるかもしれませんが、自分のペースでボタンを押してメッセージを送っていけるのでなかなか快適だったりします。もちろん、見せ場のシーンではしっかり動きますのでご安心を。

2人の主人公はそれぞれ別行動になるので、どちらを選ぶかによってストーリーの視点が変わります。たとえば配属される部隊は違いますし、それによって受ける任務を違ってきます。ちょくちょく交錯することもあるのですがお互いどこで何をしているのか、どんな思惑で行動しているのかが伏せられた状態で進行します。そんな中で展開されるストーリーは意外とハードで、政府も軍も都市もすべての陣営がなんだか信用できないし、なんなら部隊の仲間さえも怪しい。だからこそ、相手の側で何が起こっているのか、何を見てきたのかが気になりまくるわけで、クリア後の2周目に期待が高まりまくってしまうのです。が、残念ながら別行動は中盤の終わり頃までで終盤には合流しちゃうんですよね。しかもそこでお互いが情報を交換するので全部ネタバレしちゃうという。おかげで2周目の楽しみがガリガリ削がれてしまいました。この構成は残念と言わざるを得ません。

また、ストーリーそのものについてもツッコミどころと言いますか、モヤモヤする部分がいろいろあるのですが、ネタバレになってしまうので書きません。二重の意味でモヤモヤです。

怪伐軍へようこそ

そんなわけで『スカーレットネクサス』、スタイリッシュなアクションゲームとして非常に優等生な1本でした。とにかく快適に遊べて手軽に気持ちよくなれるため、今すぐカッコイイ動きで爽快感を味わいたい人にオススメ。ボリュームは1周するだけなら25時間ほど、2周目は強くてニューゲームがあるので合わせて40時間ほどになります。ストーリーは全体を俯瞰するとモヤってしまうところもあるものの中盤あたりまではグイグイ引き込んでくれますし、アクション部分は間違いなく屈指の出来なのでプレイする価値は十二分。ぜひみなさんも念力でバスや電車を怪異にぶつけてやってください。