待望の日本語化を果たした『パラダイスキラー』をクリアしたのでレビュー。本作はちょっと…いやかなり特殊な世界を舞台としたオープンワールドの推理アドベンチャーゲームです。容疑者たちからアリバイや動機を聞き込んで証拠を集めていく様はレトロなアドベンチャーゲームといった風ですが、移動がオープンワールドなのでまさに足を使った捜査になっているのが特徴的。とはいえ、肝心のオープンワールド部分がイマイチで推理モノのミステリーとしても反則な部分があるため、特殊な世界設定と相まって人を選ぶ内容となっています。
公式サイト:Paradise Killer
ここはパラダイス島、常識の通用しない世界
『パラダイスキラー』の舞台となるパラダイス島は数千年ごとに死と再生を繰り返す島です。事件は24号島が終わりを迎えるまさにその前夜に起こります。議員たちが次なる25号島を生み出すための瞑想をしている最中に全員が殺害されてしまいます。まさしく密室殺人。いったい誰が?どうやって?なんのために? この難解な事件を受けて主人公の”捜査オタク”ことレディ・ラブ・ダイは300万日の追放から解放され、真実を暴くための捜査を開始する…、というのが本作のストーリーです。文化も宗教も死生観も倫理観もかなり特殊なので、正直とっつきにくい設定ですが、これに着いていけないと置いてけぼりを食らいます。かくいうボクも序盤はかなり置いていかれました…。
捜査の基本は聞き込みから
設定は独特ですが推理モノのアドベンチャーゲームとしては意外とレトロなプレイ感になっています。容疑者たちからアリバイや動機などをひたすら聞き込んで証拠を集めていく流れはまさに王道。ただ、登場人物は一癖も二癖もあるやつばっかりな上に、セリフ回しも独特なのでこちらも着いていくのがちょっと大変です。証言を集めてまた別の人物へ聞き込みにいく流れ自体はオーソドックスなので戸惑うことはないかもしれませんが、セリフのテンポに合わせて内容を理解するのはムズかしいかも。でもこれはボクの読解力が足りてないだけの可能性はありますが…。一応、証言はメニュー内に整理されてまとめられていくので後から追いつくことはできるようにはなっています。ただし、量が膨大なので”頭の中で”整理するのはやっぱり大変ですね。
最終的に集めた証拠を持って裁判に挑むことになります。裁判に挑むタイミングは任意ですが、当然キッチリ証拠を集めてからでないと真実を暴くことはできません。裁判においてバンバン証拠を叩きつけていく展開はやはり爽快。あとハチャメチャにテンポのいい判決シーンは必見。あまりのテンポに笑っちゃいました。
最大の特徴はオープンワールドだが…
本作のウリであるオープンワールド部分ですが、正直ちょっと残念な印象です。理由としてはまず地図の使い勝手が悪いことがあげられます。立体的で凝った作りのフィールドに対して粗い画像の1枚絵の地図しかないので迷いやすいんですよね。ミニマップ表示などもないため、自分が向いている方向さえわかりません。繰り返し同じ場所を行き来することになるのでそのうち覚えてしまうものの、それまではかなりしんどいです。
また、オープンワールドでやることが収集品探しに終始しがちなことも残念な理由です。フィールド上には大量のアイテムが配置されているのですが、そのほとんどが捜査には直接関係のない収集品と通貨であるクリスタルです。もちろん捜査に関係ある証拠品も混ざってはいるのですが、目に見える収集品を目指して走り回っていたらなんか証拠品が混ざってたー!ってくらいなので、”捜査してる感”には程遠い印象なんですよね。現場検証をするような場面ではオープンワールドの良さが活きてて捜査してる感が存分に味わえるのですが…、残念ながらそういう場面も少な目です。現場では1枚絵のポイント&クリックみたいな形式になることも多く、「そうじゃねえよ!」感がマシマシ。どうして…。
推理モノとしても特殊です
肝心のストーリーはというと、こちらも人を選ぶ内容になっています。特殊な世界での事件なのでトリックも特殊になるのはわかるのですが、推理モノとしては反則気味の手が使われているからです。神だの悪魔だの宇宙人だの言ってる世界なのでトリックが特殊なのはまだしも、”後から登場人物が増える”のはいかがなものか。なので自力で推理しようという気が起きないんですよね。このあたりは推理モノの楽しみ方にもよると思うので人を選ぶんじゃないかなと。最終的に裁判で証拠をバンバン叩きつけながら裁いていくカタルシスはあるのでなんとなく気持ちよく終われるのですけれどもね。
楽園は人を選ぶ
そんなわけで『パラダイスキラー』はなかなか人を選ぶ内容となっていました。オープンワールドで推理モノのアドベンチャーゲームと聞くとそれだけでワクワクしてしまいますが、あまりにも特殊な世界の設定でとっつきにくく、オープンワールド部分も推理モノのアドベンチャーゲームとそこまで噛み合っていない印象のため、手放しではオススメしにくいです。雰囲気のよい音楽やグラフィック、収集品に込められたフレーバーなど、ハマる人ならゾッコンに惚れこみそうな内容でもあるのですけれども、それは着いていけないと置いてけぼりを食らってしまう諸刃の剣でもあります。アナタがパラダイス島に相応しい人間かどうか、それを知るのは神か悪魔か、はたまた宇宙人か。