【Outer Wilds】レビュー

宇宙探査SFミステリー

オープンワールドで宇宙探査をするゲーム、というのはつまりどういうことかというと、探査艇に乗って1つの恒星系の惑星を巡っていくゲーム、ということです。1つ1つの惑星は小さく、隣の星まではコンビニより近いくらいですが立派に宇宙です。厚い雲で覆われた一面海の惑星や地殻の下が空洞になっている星など、個性豊かな星々が探索者を待っています。どこも冒険心を刺激してくれる光景の連続なのですが、この星系は22分で終わりを迎えてしまうため、のんびりはしていられません。どうして終わりを迎えてしまうのか? どうすればこのループを断ち切れるのか? その謎を解き明かすために宇宙を飛び回って探索するのが『Outer Wilds』なのです。

これだけ聞くとめちゃくちゃ面白そうに聞こえるかもしれません。実際面白いところではあるのですが、残念ながら誰でも楽しめるような作りにはなっていません。刺さる人にはブッ刺さるけどそうでない人にはかすりもしない可能性があります。といっても、おそらく開発者の意図したものだと思うので「これはこういうゲームだ」という他ありません。なので、気になる人はGame Passなどで触ってみるのもいいかもしれません。問題はちょっと触ったくらいでは本作の魅力はまず間違いなく伝わらないことですけど…。

宇宙がとっつきやすいわけがない

本作が人を選ぶ理由は「とっつきにくさ」です。まず操作がしづらい。最初のチュートリアル的な部分で探査艇の操作や無重力状態でのジェットパックの扱い方などを学べるのですが、この時点ですでにキツく感じるかもしれません。慣れてくると惑星表面に綺麗に着地したり宇宙空間を意のままに動けたりできるようになるのですが…。ただ、この操作のしづらさは宇宙を表現する役割もになっているので、本作にとって必要なことではあるのですよね。 『Outer Wilds』における超重要なファクターは「宇宙」なので。でも船外活動するときは命綱くらい付けましょうよと思わなくもない。あと、主観視点で上も下もない無重力空間を漂うことになるため、3D酔いをしやすい人にとってはそれだけでしんどいかも。

また、ゲームの進行もとっつきにくい理由の1つです。チュートリアルが終われば探査艇で宇宙に上がって後は自由行動なのですが、何をすればいいのかまったくわからないまま放り出されるのでちょっと困りものです。よくわからないまま飛び出して、場合によってはそのまま死亡もありえるのでなかなか理不尽。どのみち20分ほど経てば死ぬんですけども。

それからストーリーも進行もとっつきにくいところです。各所に散らばる断片を集めてプレイヤーの頭の中で繋ぎ合わせていくような作りになっているのですが、ワケがわからない状態が結構続きます。おぼろげに全容が見えてくる頃にはかなり面白くなってくるのですが、そこに到達するまでが長いのですよね。しかも、各断片に到達するための道のりがなかなか険しく、謎の解き方がわかっていてもアクション部分でミスってやり直しになることも多々あるため、結構しんどいものとなっています。言うまでもないことですが、ストーリーは思いっきりSFです。そもそもSF自体が人を選ぶジャンルですからね。特に本作では難解な情報の断片を繋ぎ合わせて自力で考察していくような、前のめりな姿勢が求められます。

まとめると、多少の操作しづらさにはへこたれず、ワケもわからず放り出されても平気であり、世界やストーリーに対して”超”能動的な姿勢で挑めるSF大好きっ子が『Outer Wilds』に選ばれし者なのです。宇宙に出るのにライトスタッフが必要ではなくなりつつあるとかなんとか言われている昨今ですが、『Outer Wilds』においては様々な適性が問われるようです。やっぱり宇宙って厳しいや。

宇宙はいいぞ

このとっつきにくさを乗り越えた先にはエキサイティングな宇宙探査が待っています。前述のとおり、舞台となるのは小さな星系なのですが、それでも見事に宇宙を感じられるものになっています。プレイ中は心が完全に宇宙に飛んでいってます。探査艇に乗り込んで発進したら自動操縦に切り替え、到着するまで端末で情報の確認をしつつ時間を潰して、惑星の近くまで来たら手動操作で着陸。無事に着陸したら宇宙服に着替えて探査開始。これだけでも結構アガります。降り立った惑星では未知の光景の連続で、これもまた宇宙を感じさせてくれます。本作の”宇宙を探索してる感”は本当に素晴らしい。

ただ、このルーチンは何度も繰り返すことになるのでだんだん煩わしくなってきます。探索で情報を掴めば入れなかった場所に入れるようになったりするのですが、「またあそこまで行かなきゃならんの?」みたいなことも増えてきてしまいます。未知の場所や新しい事実の発覚が連続しているうちはいいんですけれども、やや詰まってきて新鮮さをうんざり感が上回るとしんどくなってきてしまいます。特に時間経過で変化していく環境の中でタイミングを求められる謎解きなどは失敗すると即座にリトライできないため、うんざり度が高いです。うんざりする前に駆け抜けられたかどうかで印象が分かれるところかもあるんじゃないかと思います。このうんざり感を上回る好奇心を持てる人はやはり選ばれし者なんじゃないかと。

宇宙に必要なのは資質と運

そんなわけで『Outer Wilds』は人を選ぶゲームです。とにかくとっつきにくい。断片的な情報を繋ぎ合わせて考察することで次の目的地を決めて進めていく、という流れはわかってくると面白いのですけど、「そういうゲームなのだ」とわかるまで結構かかるのが難点。好奇心をもって挑めばそれに応えてくれる世界が作られているとは思うので、どれだけこの宇宙に対して好奇心をもてるかどうかがポイントではないかと。とはいえ導入部分で放り出されてしまうので、好奇心をもてるかと言われたらなかなかムズかしいかも。あと、自由であるが故に人によって体験もかなり違ってくるはずなので、好みだけでなく運も絡むんじゃないかなと思っています。そんな運と資質を兼ね備えた人材をOuter Wilds Venturesは待っています。たとえ楽しめなかったとしても気にする必要はないと思います。宇宙は決してやさしくはないのだから。

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