横スクロールアクションという完成されたジャンルの中において、さらに完成度を高めた作品はいつやってもおもしろいものです。
メタルスラッグ | タイトル一覧 | NEOGEO Station
戦車道に感化された人のために戦車ゲームを紹介しましたが、自分で書いててたまらなくなったので、久々に『メタスラ』をプレイしてみました。このジャンルの完成系の1つといってもいいタイトルなので、いまやってもやっぱりおもしろかったのです。
ちなみに、今回プレイしたのはPSストアで配信されているNEO GEO Station版の初代『メタルスラッグ』です。サターン版ももっているのですが、サターンを引っ張り出して繋ぐのも面倒だし、何より拡張ラムカートリッジが認識してくれるまでの戦いが避けられそうになかったので、思い切って買ってしまうことにしました。
『メタスラ』シリーズは、ちょくちょく無性にやりたくなることがあるので、いつでもできる状態で所持しておきたいもの。なので、PS3のHDDに入れておけるのはありがたいですね。移植度も高く、サターン版のような読み込み時間もないとなればなおのこと。
メタルスラッグとは
ゲーセンに『メタスラ』が登場し、初めて画面を見たとき、「そうそう、こういうのでいいんだよこういうので」と思いつつ即コインを投入したのはいまでも覚えています。見た目から想像するイメージと、実際のプレイ感がガッチリ合致していてしっくりくる上に、繊細なグラフィックとリアクションは想像を超えたものばかりで、ゲームオーバー後に即座に再チャレンジしたことも。
当時ですら、横スクロールのアクションゲームはある種完成されてしまったジャンルであり、そのためか新作が登場しづらい状況だったと思います。そこへきて、あえてこのジャンルのど真ん中に直球勝負を仕掛けてきたわけです。そりゃハートを射抜かれるのも当然じゃないですか。
プレイヤーのやることはジャンプとショットのみ(ボムもあるけど)、敵の攻撃をかいくぐって進んでいくという、極めてシンプルなもの。シンプルであるがゆえにとっつきやすく、上達も実感しやすいのがナイスなところです。アーケードゲームは「ワンコインでどれだけの時間を遊んでいられるか」ってことが重要なんですが、上手くなればなるほど、長く遊んでいられるのはモチベーションを維持しやすいですよね。
このシンプルで新しくもない内容がどうしてそこまでウケたのかといえば、やはりきめ細やかに描かれたドット絵なのでしょう。
グラフィックとゲームのおもしろさはちゃんと結びついている
技術が進歩して高解像度な美麗グラフィックが登場するにしたがって、「ゲームのおもしろさとグラフィックのきれいさは関係ないよ」という人も増えていった印象があります。そう考えていた時代がボクにもありました。でも、やっぱりそうとは言い切れないと思うのです。
ゲームは、画面の中を操作して、それが気持ちよかったり爽快だったりする遊び道具なわけですから、「操作するものが何であるか」ってことは大事なわけです。『メタスラ』のグラフィックは、最初見た瞬間に「これは動かしてみたい!」と思える魅力を持っているわけです。戦車が飛んだり跳ねたりしゃがんだりしてるわけですから、触らずにはいられません。
また、敵のグラフィックやオブジェクトなど、アクションがとにかく豊富で見ていて飽きさせないのもすばらしいところ。プレイヤーがやっていることはジャンプ&ショットとシンプルなのですが、こちらのアクションに対するリアクションが本当にバリエーション豊かであるため、プレイするたびに新しい発見があるわけです。これもグラフィックとゲームのおもしろさが結びついているのだと思います。
たとえば、撃てば壊れる場所がたくさんある、っていうところとか。プレイヤーの「撃つ」という行為に対して「壊れる」というリアクションをきちんと返してくれるわけですね。単純に爽快感もありますが、繊細に描かれたグラフィックだからこそ、あちこち触ってみたくなるわけで、その好奇心を満たすためにちゃんと「壊れてくれる」のです。さらに、壊れるにしても、ただ爆発して消えるだけでなく、壊れたときのグラフィックが用意してあるのがすばらしい。リアクションが丁寧なんですね。
他のゲームだと、『メタルギアソリッド2』で、消火器を撃てば煙が出たり、照明を撃てば壊れて暗くなったりと、かなり細かく作られており、プレイヤーの行動に対するリアクションを返してくれます。反対に、リアクションを返してくれない例として、『バイオハザード』シリーズで、ショットガンやロケットランチャーを撃ち込んでもびくともしないドアとか。
期待したリアクションが返ってこないと「えー…」って感じてしまいますが、期待以上のリアクションが返ってくるわけですから、「えっ、こんなところも壊せるの」って驚きと喜びになっていくのです。
プレイヤーの期待どおりのリアクションを返してくれるシーンは、たとえば、戦車で車を踏み潰せるところとか。自動車が置いてある時点でなんとなく想像はできるのですが、実際に踏み潰してみると想像以上に細かく壊れるので驚かされ、痛快なわけです。
プレイヤーキャラも敵も、やられ方のバリエーションが多いことからも、リアクションに力が入ってることがわかります。硬いボス敵にも、あえて体力ゲージ表示などはせず、少しずつ段階的に壊れていくグラフィックが用意されているという力の入れようですから、いかにこの点を重視していたのかがうかがえます。
そんなわけで、『メタスラ』は完成されたジャンルの中で、グラフィックを武器に完成度を高めたタイトルだと思ってます。21世紀になってもドット絵的なビジュアルを押し出そうとするタイトルはまだまだ多く、そんななかで『メタスラ』のグラフィックは時代を超えても色あせず、いつやってもおもしろいタイトルであり続けるのではないでしょうか。
というわけで、久しぶりに遊んでみたいと思った人も未プレイの人も、PSストアで900円で配信されてますのでこの機会にいかがでしょう。9クレジット分でやりたい放題、しかもオンライン協力プレイに対応しているだなんて、本当いい時代になったものです。