【攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX】10年前からみた未来像 久々に見返しての感想

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』が2/20までの間、YouTubeにて期間限定の無料公開だったので、一気に見返してしまいました。いまだからこそ感じたこととか、感想とか。

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』がYouTubeで全話無料公開中!2/20まで | シバ山ブログ

YouTubeで無料公開中だったので、週末に一気にマラソンしてしまいました。プレイリスト形式なので、次から次へ流れていくため、マラソンしたというより、マラソンしてしまったというべきか。

『攻殻S.A.C.』はもともと2002年から2003年にかけて放映された作品なので、いまから10年ほど前ということになります。そう、あれからもう10年…。

老け込むのはともかく、10年前から見た未来観はいろいろと感じるところもありました。いまだからこそ感じた点も多くあり、『攻殻S.A.C.』を以前見たという人も、良い機会なのでぜひ見返して欲しいと思いました。

『攻殻S.A.C.』の舞台は2030年なので、いま2013年から見てもまだまだ未来なわけです。とはいえ、10年前から想像されていた未来観を、現代がすでに追い越してしまっていたり、現代に当てはまっていたりと、いま見ると興味深い点がかなり多くあります。

電話のデザインは時代を表す鬼門なのか

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最初に見返してまず感じたのが、携帯電話のデザインの古さですね。ストレート型や折りたたみ型で物理キーを有したタイプを使っているわけです。2002年だと、いまでいうフィーチャーフォンが主役で、3G通信が普及し始めた時代。タッチスクリーンのデバイスがこんなに普及する現代の状況は予見できなかったようです。とはいえ、「電脳化」が進んだ世の中なら、スマートフォンなんて不要になるのかもしれませんが。

電話のデザインが時代を表してしまうことは、よく言われることです。長期連載を続ける『ガラスの仮面』では、時代を反映しやすい流行モノは極力使わないそうですが、電話のデザインだけはどうにもならなかった、みたいな話をどっかで見た気がします。そもそも、携帯電話がない時代まで遡ると、「携帯で連絡すればいいじゃん」というツッコミが出てきそうになりますし。

カッコイイ公衆電話も登場していますが、携帯電話の普及により、そもそも進歩をしなくなってしまった感がありますね。調べてみるとICカード用の公衆電話はカッコイイデザインになっているようですが、すでに全廃されているようで、いまのところ「緑のアレ」が主流のようです。

日本の公衆電話 – Wikipedia

記録メディアにも時代の流れが

記録メディアの描写にも時代を感じます。「ウチの職場じゃ3.5インチのフロッピーも現役だぜ」という人もいるかもしれませんが、お役所だから古いメディアを使い続けている、って演出なのかも…。

といっても、映像的に「これは記録メディアなんだな」とパッと見でわかるものにしておかなきゃいけないので、突飛なデザインのアイテムは登場させられないでしょうけど。

後のエピソードではmicroSDっぽいサイズのメディアも登場してましたね。2003年くらいだとminiSDカードが主流で、容量も16MBとか32MBとか。ここからmicroSDへ小型化、大容量化の進歩をしていきますが、いま現在実現されてしまっていますね。ここからさらに小型化されると人間の手で扱いづらそうなので、2030年くらいになると、そもそもカードの形をしていないものになるのかも。

チャット回におけるニコ動っぽさ

第9話「ネットの闇に棲む男 CHAT! CHAT! CHAT!」は、とあるチャットルームで参加者たちが「笑い男事件」の推理を進める話。映像では、参加者たちの発言に合わせて匿名っぽい書き込みが流れているのが見て取れます。この図式、ニコニコ動画やUstreamにおける「配信実況」のカタチですよね。

放送当時だと2ちゃんねるっぽい、と思ったのですが、リアルタイムでコメントを表示していくシステムはすごくニコ動っぽい。ちなみにニコ動の登場は2006年だが、ユーザの生放送機能が追加されるのはもっと後。(2008年かな?) Ustreamもベータサービス開始が2007年なので、エピソード放送時の2003年からはちょっと未来にあたります。

このエピソード自体は、物語の核になる「笑い男事件」の状況を説明するためのエピソードで、公安9課のメンバーも登場しない、なんというか地味な話だった印象だったけど、いま見るとニコ動の予見っぽく見えて感動してしまった。そこまで意識して作られたかどうかはわかんないけど。

現代社会にも潜むスタンドアローンコンプレックス

タイトルにも含まれる「スタンドアローンコンプレックス」とは、メインストーリーの「笑い男事件」における社会現象を名付けた造語です。

「笑い男事件」における一連の社会現象に対して、草薙素子が名付けた造語。作中における電脳技術という新たな情報ネットワークにより、独立した個人が、結果的に集団的総意に基づく行動を見せる社会現象を言う。孤立した個人(スタンドアローン)でありながらも全体として集団的な行動(コンプレックス)をとることからこう呼ばれる。これは個人が電脳を介してネットを通じ不特定多数と情報を共有することにより、無意識下で意識が並列化されながらゆるやかな全体の総意を形成し、またその全体の総意が個人を規定するために発生するという、高度ネットワーク社会が舞台であるが故に起こり得る現象である。
時にはある事件において実質的な真犯人が存在しない状態が、全体の総意において架空の犯人像を生み出し、その架空の犯人像の模倣者(模倣犯)がその総意を強化・達成するような行動を見せるという独特の社会現象が起こる。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX – Wikipedia

現代は、「電脳化」はまだでも、ソーシャルメディアネットワークと携帯デバイスの普及で、誰でも自分の意見をネットに流せる時代になっています。Twitterでいろんなことが物議を醸すわけですが、元を辿れば誰が言い出したことなのかハッキリしないことも多々あります。たとえば、「一般人は~云々」なんていってても、この「一般人」は本当に存在するのでしょうか、とかね。

不特定多数と情報を共有するのは「電脳化」がなくてもすでに起こっていることで、「無意識下での意識の並列化」による「ゆるやかな総意の形成」も、すでに現実のものなのかもしれない。

あと「笑い男事件」を見返していると、「遠隔操作ウィルス事件」を思い浮かべた人もいるんじゃないだろうか。これはただ、まだ犯人が捕まっていない、ってことなのかもしれないけど。

そんなわけで、いま見ると当時とはまた違った見方でいろいろと考えさせられることも多い『攻殻S.A.C.』。新作発表前というタイミングでもあり、とても良い機会なので、未見の人はもちろん、以前見た人もぜひ見返してみてはいかがでしょうか。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX – YouTube

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