『The Bug Butcher』は、跳ねているエイリアンを撃てば撃つほど分裂して小さくなっていくアクションシューティング。どこかで見たことがあるような?と思った人がご明察、『SUPER PANG』に影響を受けたとのこと。元ネタと同じく、撃たなきゃクリアできないけど撃てば撃つほどリスクは増大していく基礎メカニズムで完成度は高く、さらに今風の要素で味付けしてエキサイティングに仕上げた現代版となっています。
『The Bug Butcher』は以前から気になっていたのですが、Steamの旧正月セールでちょっとセールになっていたので購入。そのまま一気にクリアまでプレイしてしまいました。2~3時間もあればクリアできるので、軽く遊ぶには最適なボリューム。内容もとっつきやすく、テキストも日本語化されているので安心です。
冒頭でも書いたとおり、本作は『SUPER PANG』の現代版。『SUPER PANG』の元となった『キャノンボール』(英題『PANG』)は、固定画面でバウンドするボールを縦に伸びるワイヤーで下から撃って破壊すればクリアとなるゲームでした。ボールを撃つと小さなボールに分裂してどんどん増えていくため、クリアを目指すとリスクが増大していく、というメカニズムがシンプルながら奥深いゲームをとなっています。『SUPER PANG』では、アイテムによるパワーアップや軌道の違うボールなどを追加されて、まさに進化系といった内容でした。
今回の『The Bug Butcher』では、さらに要素を追加……というより、味付けを変えてきた印象です。具体的には、狙って撃つ楽しさや手に汗握る弾避けといったシューティング要素を強めてある感じ。なので、シンプルながらエキサイティングなプレイ感となっています。
相手はエイリアンだからビーム撃ってもいいよね
『The Bug Butcher』で撃つべき対象はボールではなくエイリアン。エイリアンなので、ボールのように規則的に跳ねているだけでなく、やや変則的な軌道で跳ねるヤツや弾を撃って攻撃してくるヤツなどもいます。そもそも床を跳ねずに壁に張りついているヤツなどもいて、バリエーションは豊か。
多数のエイリアンが組み合わさって多彩な攻撃を仕掛けてくるので、なかなかアグレッシブ。後半ステージでは、さながら弾幕シューティングのような密度になることもあり、手に汗握る弾避けに酔いしれたり、被弾して思わず変な声が出たり。
敵が強くなっているならプレイヤーも強化されています。そもそもワイヤーではなく銃を装備しており、連射が効くのでバリバリ撃てます。とはいえ、適当に撃っていると弾と弾の間を抜けられて当たらない、という絶妙な調整をされているため、キッチリ狙って撃つ必要があるのは、ワイヤー時代と変わりません。
さらに、ドロップアイテムによるパワーアップもあります。どれも一時的な強化とはいえ、そのぶん効果は強烈。たとえば、ガトリングガンで高レートな弾を広角に撃てたり、ロケットランチャーで爆風付きの弾を広範囲に撃てたり。中でも強力なのがレーザービームで縦一直線に伸びるビームで敵を一掃できます。「このゲームでこれができたら反則だろ!」って思いますが、超エキサイティングなので、個人的にお気に入りです。
また、敵に弾を当てたり倒したりするたびに増えていくゲージがあり、満タンになれば強力な攻撃が発動できるシステムもあります。一定時間スピードアップしたり敵を凍らせて停止させたり、種類はいろいろありますが、発動と同時に無敵になるのはすべて共通。なので、シューティングによるボムのような緊急回避としても使えます。ここはほぼシューティングゲームですね。
要するに、敵もプレイヤーもすげー強化されているわけです。全体的にテンション高い感じで、古臭さはまったくありません。現代的なスパイスの数々が、シンプルなゲームであるが故の地味さを払拭していて、エキサイティングなプレイ感を生み出しているのです。奥深さはやや薄れてしまった印象もなくはないのですが、楽しいんだからいいじゃない。
金で強化するなり服を脱いでシビアにいくなり
ゲームモードは3つあって、1つはミッションモード。全30ステージを順番に挑戦していくモードで、5つのエリアで6ステージごとにボス戦のようなシーンがあります。敵を倒して得たお金で武器を強化していく要素もあるので、繰り返しプレイしていけばクリアはそれほどムズかしくないでしょう。というか、強化しないとかなり厳しい。火力が足りないと制限時間内に倒しきれないので。
あと2つのゲームモードはパニックモードの1人用と2人用(ローカル)です。パニックモードとは、延々と続くサバイバルモードのような内容で、こちらもお金による強化はあるものの、1ゲーム限りのものなので、アーケードスタイルな内容となっています。慎重に進めたくなるところですが、こちらも制限時間はあり、敵の落とす時間増加アイテムを拾って回復していくことになります。
難易度は3段階で(パニックモードは2段階)、低難易度はプレイヤーの体力が高く、高難易度では即死、という設定です。難易度別にプレイヤーキャラクターの服装が変化して、高難易度ではブリーフ1丁になるあたりが細かい。そんな装備で大丈夫か。
シンプルだけど楽しいエイリアン退治
そんなわけで『The Bug Butcher』は、ご先祖様から基礎メカニズムを継承しつつ、現代的な味付けでエキサイティングになったゲームでした。新旧の融合という意味では大成功といっていいかもしれません。原作のメカニズムがもともと完成度されていただけでなく、ショットの間隔や敵の組み合わせ、制限時間やゲージ消費技といった追加要素の丁寧な調整こそが、本作の完成度を押し上げているのではないかと。
クリアするだけなら2~3時間なので、忙しい現代人にも最適。ボリューム不足と思うなかれ、密度はなかなかのもので、エキサイティングな体験を与えてくれます。「あぁー、暇できちゃったなー、なんか手軽に遊べるゲームないかなー」なんて人にとってはジャスティスとなることでしょう。
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