かつてファミコン少年だったボクは友人たちとゲラゲラ笑いながら『ダブルドラゴン2』で膝蹴りを打ち合ったものでした。「やめろって!そこで当たったら落ちるから!」ズバッシャァァァ!!「あああああ!だからやめろっつってんだろ!!」みたいな感じで。そこには笑いがあったのか、本当はリアルパンチだったのか、今となっては定かではありませんが、とにかく愉快な時間だったことだけは確か。そんなボクも今ではシングルドラゴン。残念ながら今回の『4』はオンライン非対応なので以下、1人でプレイした場合のレビューとなっております。
https://www.arcsystemworks.jp/dd4/
人は膝蹴りでブッ飛ばすもの
『ダブルドラゴン4』はベルトスクロールとプラットフォーマーのハイブリッドスタイルなゲームで、パンチとキックで敵をボコボコにしながら進むアクションゲームです。ファミコン風のグラフィックが当時を思い出させますが、実際、ファミコン版『ダブルドラゴン2』の直系を感じる内容となっています。
まず特筆すべきは効果音。ファミコン版と同じく「シュバッ!シュバッ!ズバッシャァァァ!!」みたいな効果音が再現されており、超カッコイイ&超キモチイイ。膝蹴りの「スヴァッシャピ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!」みたいな文字では表現できない音もそのまんま。BGMについても現代風アレンジと8bitなレトロアレンジが選べるのですが、個人的なオススメはやはりレトロアレンジ。あの頃の記憶が呼び覚まされて「そうそうこんな感じだったよね」って気分になれます。
操作系も昔のままで、2つのボタンでパンチとキック、同時押しがジャンプというファミコン版準拠のもの。現代っ子は首を傾げそうな操作系ですが、ファミコンはメインのボタンが2つしかなかったのでこんな操作系だったんです。今回『4』ではジャンプボタンが別途設定されているので格段に操作しやすく。もちろん、ボタン2つだけであの頃と同じ感覚でプレイするのことも可能であります。
操作系こそ昔と同じですが、技の入力受付はものすごく甘くなっているので、めっちゃ動かしやすくなっています。膝蹴りを連発しようとしてぐにぐにしていたらボタンを壊してしまったあの頃にサヨナラ。今ではポチポチ押してるだけで膝蹴りを連発できるようになりました。旋風脚だって出し放題。いつでも気持ちよくモヒカンどもをブッ飛ばせます。じゃあ楽勝じゃん?と思いきや、実はそうでもなかったり。
見た目はファミコン風でも中身は現代風
技が出し放題なのに楽勝にならないのはなぜか?といえば、敵の動きがよくなっているからでしょう。敵は飛び蹴りをしゃがんで避けるばかり…というわけでもなく、軸をずらして攻撃を避けつつ、こちらを回り込んでくるような動きを基本として立ち回るようになっています。ベルトアクションの基本ですね。なので、大技を連発しているだけでは背後から硬直を突かれてしまうわけです。この調整には開発陣の「技は出したいときに出せるようにしてあげるけど、連発してるだけじゃダメですよ」という意図を感じずにはいられません。
もう1つの調整を感じるポイントはダウン後の攻防。実はこのゲーム、起き上がりに無敵がありません。素直に起き上がると敵に殴られてまた地面とコンニチワします。にもかかわらず、敵は容赦なく”起き攻め”を仕掛けてきます。「それってクソゲーでは?」と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。そうではありません。
本作では起き上がり時に攻撃を出すと無敵になるのです。起き上がり中はしゃがみ状態なのでボタンを押せばアッパーもしくは膝蹴りが出るのですが、これらに無敵が付きます。なので、ハメ殺されることはありません。ですが、どちらも大技なので外せばもちろん硬直があるわけで、やっぱり大ピンチ。なんだか同社の格ゲーみたいですね。起き上がりに出せる技は前後のどちらかにしか出せませんが、敵はそれを見越したかのようにダウン中に前後に揺さぶってくるので一筋縄ではいきません。このダウン後の攻防でいかに復帰できるかが攻略のカギになっているといっていいでしょう。
とはいえ、そもそもダウンはしたくないものです。となると、隙のデカい大技ではなく、パンチとキックを軸としたローリスクな立ち回りが基本になってきます。だからといって旋風脚や膝蹴りが不要になるわけではなく、打つべき場面を見極めてキッチリ打っていく必要があります。ファミコン版に比べて技の種類は増えているのですが、死に技が存在しないように、でも「これだけやってりゃいいじゃん」にならないように、すべての技に必要性があることを目指して調整されているような印象を受けますね。まさに現代版としてのチューニングといえましょう。
ストーリーとタワーを走破してキャラクターを解禁せよ
ゲームモードはストーリーと対戦、それからストーリークリア後に追加されるタワーの3つ。ストーリーは全12ステージで、1つ1つのステージは短めです。残機+クレジット制となっており、落下による即死などもあるため割と死ねますが、1度クリアしたステージはステージセレクトで選べるため、クリア自体は易しめ。2人プレイはオンライン非対応でローカルのみ。ファミコン版と同じく味方の攻撃が当たるモードと当たらないモードが選択できるようになっているので、仲良く膝蹴り合戦ができることでしょう。
ストーリーはアメリカの荒野で車をぶつけられるところから始まり、「怒りのデス・ロードかな?」と思わせておいてから、後半は舞台を日本へと移し、ニンジャ、カラテカ、スモトリの入り乱れるインチキジャパン満載でショッギョ・ムッジョを感じずにはいられない。ファミコン風のグラフィックではあるものの、ファミコンとは違って色彩豊かに描かれる背景はかなりの美しさ。
ストーリークリア後に解放されるタワーは、要するにサバイバルモード。残機ナシで体力がなくなるまでひたすら敵と戦い続けていくゲームモードです。上層階ではストーリーには出てこなかったけどどこかで見たことのあるような敵も登場し、なかなかの難易度となっています。ムズかしいだけあって、規定階まで到達すれば嬉しいご褒美もアリ。目玉はストーリーモードで解放したキャラクターを全モードで使用可能にするもので、そこらのザコから中ボスやラスボスまで、対戦だけでなくストーリーやタワーで使えるようになります。ここからが『4』の真骨頂。
ドラゴンの真価はダブルで
そこらのザコ敵からラスボスまで使える!というと、なんだか「ガーディアンヒーローズ」みたいですが、本作でもかなりの性能差があります。さすがに市民と神のような差はありませんが、ザコはザコでやっぱり弱め。でもナイフやダイナマイトを投げることができたりして、何かしらの強みを与えられているので意外と戦えます。とはいえ、さすがに飛び道具は弾数に制限があるのですけれども。
苦戦させられたボスキャラを自分で使ってみるとあんまり強くなかったり、中ボスがめちゃ強い技を持っていたりと夢が詰まっています。主役2人とは違って調整され尽くしていない感じ。こういうと何ですが、何かまだ”穴”が存在していそうなワクワク感がですね、たまらないわけです。
キャラクターをアンロックして全モードで使えるようにしておけば、来客用としてこれ以上ない一品となってくれそうな予感がします。操作系はファミコンと同じですし、味方同士の殴り合いも対戦もあるし、1つ1つのステージも短くボリュームも手軽。ファミコン少年だったあの頃の気分に戻ってゲラゲラと笑いながら楽しめるのではないでしょうか。繰り返しになりますが、ボクはシングルドラゴンなのですけれども。