【TUNIC】レビュー

キツネゼルダこと『TUNIC』を”自力で”クリアしたのでレビュー。自力で解きましたからね!

各所で絶賛されていたりもする『TUNIC』ですが、まず最初に申し上げておきたいのは「まったくゼルダではない」ってこと。見た目は懐かしの「ゼルダ」っぽいですけど、中身は全然別物です。それからかなりムズかしいゲームであること。アクションも謎解きもメチャムズです。とても万人にはオススメできないムズさです。それ故にクリアできたときのカタルシスも凄まじいので、その瞬間の気持ちよさから「超ウルトラ名作!」とか言っちゃいそうになったわけですけども、ここはちょっと落ち着いてレビューします。

公式サイト:TUNIC

※2022/10/17追記 動画でのレビューも作りました。

思った以上に「ゼルダ」じゃない

▲「ゼルダ」っぽい要素もあるっちゃあるけど中身は別物。

パッと見はクオータービューの「ゼルダ」っぽいですが、プレイしてみると全然「ゼルダ」ではないとわかります。確かに、剣と盾をメインにしながら魔法で火の弾を撃ったり爆弾を投げたりフックショット的なやつを使ったり、なんか「ゼルダ」っぽいところもあります。ですが、これらを活用してのバトルはまったく「ゼルダ」っぽくありません。

『TUNIC』でのバトルは敵をロックオンしながら様子見して、攻撃して来たら盾でガードするかローリングで回避、その隙にこちらの攻撃を当てていく、といったもの。スタミナゲージが存在し、ガードや回避で消費します。こういうバトル、どっかで経験ありませんか。そう、「ダークソウル」です。『TUNIC』お前もか、お前もソウルライクなのか、ってなりましたが、ソウルなのはバトルだけではありません。

思った以上にソウルライク

▲これだけ要素が揃えばソウルライクと言っていいはず。

火の灯った石像がチェックポイントになっていて、アクセスすると体力が回復しますが敵も復活。回復アイテムは回数制で、このチェックポイントにアクセスすると補充。死んだ場合はお金をその場にドロップするけど、戻って回収すればセーフ、などなど。びっくりするほどソウルライクです。それにしても、こういったシステムって昨今ではあっちこっちで見かけるので、すっかりスタンダードになった印象ですね。

で、バトルの難易度はもちろん高めになっています。ということは、回復アイテムがなくなって体力も減っている状況で「チェックポイントどこ…そろそろ出てきていいんじゃないですか…」と彷徨ったり、けっこう進んだところで死んでしまって「またあそこまで行かなきゃならんのか…」と絶望したり、まさにソウルな気分になれます。いや、そんな気分になりたくないんですけど、気付けばそういうゲームをやっています。どうしてなんでしょうか。

ちょっと理不尽なところも…

▲終始リーチの短さに泣かされます。所詮はキツネなのでしょうか。

ソウルライクで高難度のバトル!と聞くと飛びつきたくなる人もいるかもしれません。でもちょっと待ってください。『TUNIC』のバトルは残念ながらやや理不尽なところもあります。というのも、ムズかしさの理由が敵の強さよりキツネ君の弱さからきているからです。特に剣の弱さ。いくらなんでもリーチが短すぎるし範囲も狭すぎます。そのくせヒットすると敵を押してしまうので2段目が当たらない、なんてことも日常茶飯事。そのせいでけっこうストレスあります。もうちょっと長くしてもバチは当たらないと思います。あと攻撃の隙を回避ステップで消してくる後半のボス、許しません。

ちなみにこれはレビューではなくて攻略情報ですが、剣だけで戦おうとせず消耗品のアイテムを活用すればストレスを軽減できます。爆弾をはじめとしたアイテムは「ゼルダ」のように謎解きに使うことはないのでガンガン投入してOK。やべーキツい!と思ったらダイナマイトを投げましょう。こんな短い剣だけでがんばる必要はありません。文明の利器でストレスから心を守りましょう。お金は力です。

パズルではなくガチの謎解き

▲「まさかマジで言ってんの…?」「マジだこれ!?」ってなるのが『TUNIC』の謎解き。ガチです。

さて、『TUNIC』最大の特徴はなんといっても謎解きでしょう。謎解きといっても「ゼルダ」のようなパズル的なやつではありません。小気味よく解けるパズルではなく、「これ本当に解かせる気あるの…?」みたいなガッチガチの謎解きです。それこそリアルで紙とペンが必要になるくらいにガチなやつです。もちろん解けるようにはなっているわけですけれども。実際に解きましたし。しかし2022年のゲーム攻略に紙とペンだと…?って思われるかもしれませんが、そうです。ガチです。

そもそも本作は操作説明もチュートリアルもありません。なんか浜辺で目覚めるところから始まって、目的も何もわからないところからスタートです。とりあえず進める方向へ進み、押せるボタンを押してやれることを手探りで確かめる。そういうところからして謎になっているくらいにはすべてが謎だらけ。世界も謎だらけならゲーム自体も謎だらけなわけですが、少しずつ真相に迫っていく感覚はやはりテンション上がります。

ゲームの中に説明書が!?

そしてこの謎を解くために必要になるのが説明書です。なんと『TUNIC』ではゲームの説明書の断片がゲーム内に落ちているのです。説明書を集めていけば、どうすればいいのか、何をすればいいのかが徐々に明らかになっていきます。とはいえ、説明書もあっちの世界の言語で書かれているのでまともに読めません。つまり、説明書自体も謎というわけです。なんてこったい。

▲ちょっと懐かしさもある説明書。大半が読めない言語で書かれているのがつらみ。

そういえば、昨今はめっきり触れる機会の減ったゲームの説明書ですが、本作の説明書には攻略のヒントらしきものがあったり最後にメモのページがあったり、なんとも懐かしさを感じる作りになっています。前の持ち主が書いたと思われる手書きの書き込みがあったりするのもいいですよね。ファミコン時代の中古ソフトって感じで。…いや、ファミコンの中古ソフトはだいたい箱も説明書もなかったですけども。裸ソフトの方が安いですしね。

ともあれ、ゲーム内で説明書を集めて謎を解いていく、というのは独特の感覚です。そのうえで、本作は”謎の仕込み方”が凄まじいのでヒントに気付けたりその意味を理解できたりした瞬間の快感がスゴイ。「もしかしてこれそういうことなの…? いやいやまさかそんな…」「マジか…、マジか!?」みたいな。特に終盤、説明書とにらめっこして超絶スゴイ謎の仕込みに気付いて解いているときの興奮は何物にも代えがたいものがあります。あの扉を開けた瞬間はマジで電流が走って「スーパー名作確定!」ってなります。でも一夜明けて冷静になるとさすがに万人向けじゃないよなーとなりました。そのくらいガチな謎解きを求められるのが『TUNIC』なのです。

▲『TUNIC』で最高にブチ上がる瞬間。やった人にはわかると思います。

こうした謎解きを盛り上げるのが神秘的でミステリアスな音楽たち。ビジュアルはかわいらしいですけど音楽は全然そんなことないんで、そういうところからも「あっ、これカワイイ系のゲームじゃないんだな」ってわかると思います。透明感のある美しい音色のようで、刺すような冷たさもあるというか、そんな雰囲気の曲が多い印象です。ゾクゾクします。かわいらしい絵面とは合っていませんが謎だらけの世界とはマッチしていて良いですよね。ちなみにサウンドトラックはBandcampにあります。

見た目はカワイイけど中身は全然かわいくないよ

▲ファンシーなビジュアルとは裏腹に人を選ぶ内容です。

そんなわけで『TUNIC』は高難度なソウルライクなアクションと高難度でガチな謎解きを求められる大変ハードなゲームです。キツネ君のファンシーな「ゼルダ」ではありません。っていうかこの内容でなんでこんなカワイイ”ガワ”を被せた?悪意か?ってなるくらいです。特にアクションのムズかしさは主にプレイヤーキャラクターの弱さからくるものなので割とストレス溜まります。一応、バトルの難易度は設定で下げられるようになり、無敵モードも追加されてはいるのですけれども。どのみち謎解きのガチさは本物なので、かなり人を選ぶゲームだと思います。謎解きが大好き!って方にとっては最高の挑戦状になると思いますので『TUNIC』、いかがでしょうか。

『TUNIC』はPS5、PS4、Xbox、Switch、Steamで配信中。Game Passにも対応してます。