【アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝】レビュー ネイサン・ドレイク最後の冒険に「映画的なゲーム」の完成系をみた

『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』(原題:『Uncharted 4: A Thief’s End』)をクリアしたのでレビューなど。このご時勢、金をかけまくったゴージャスなシングルキャンペーンを提供してくれるのはなかなか貴重なことであり、本作はその中でも最高峰の1つである「アンチャーテッド」シリーズの最新作。お茶を飲むよりワクワクアドベンチャーでございます。

「映画的なゲーム」なんていうと渋い顔をする人もいるとは思いますが、「アンチャーテッド」シリーズは「映画みたいな映像を延々と見せつけられるゲーム」というわけではなく「映画のような映像の中で主人公を動かして遊べるゲーム」です。もちろん、映画のように壮大で美麗なビジュアルのために超お金のかかっていそうなグラフィックで描かれており、その中を飛んだり跳ねたりできるのは映画の主人公体験といえましょう。

アンチャーテッド4 最高峰のグラフィックで堪能できる古代遺跡

PS3時代からキレイだったグラフィックはPS4になってさらに磨きがかかっております。部屋に置いてある何気ない小物から爆発時に飛び散る破片まで、一体どこまで作り込まれているのかと舌を巻くばかり。このグラフィックを最大限に堪能させるため、画面内のゲーム的UIが最低限に抑えらているのも特徴です。探索時のアクションボタン表示や戦闘時の武器弾薬の表示程度で、体力ゲージやミニマップすらありません。しかし、それでも迷うことなくゲームを進行できるのはプレイヤー誘導のうまさ故。

迷っているようでもゲームの掌の上

本作でもっとも特筆すべき点といえば、やはりこのプレイヤー誘導のうまさでしょう。ミニマップもレーダーもナビゲーションもないのに迷うことがない。迷うことがないというか、意図的に迷わせたうえでゴールにたどり着かせるようになっていたりします。

たとえば、「あそこが怪しいな」と進めた先は行き止まりで、「こっちじゃなかったか、じゃあ引き返そう」と振り向いたところに登れそうなハシゴが!みたいな具合。ゲーム側があからさまに「ここだ!」と矢印を置くのではなく、プレイヤーの目が自然とそちらへ向くように仕向けられているのですよね。こういうのが全編に渡って続くので、一本道なのに「冒険してる感」がある。本シリーズで毎度のことなのですが、本当にお見事。

で、ゲームの誘導に導かれて進んだ先では、足場が崩れて落ちそうになりながら撃たれたり爆発したりと畳みかけるような展開が待っています。プレイヤーの行く先々で橋やハシゴが壊れるのはもうお約束になってしまっているとはいえ、「もう大丈夫かな」と思わせたところでまだまだ崩して追い込んでいく、このピンチの演出は非常に楽しい。派手にカメラアングルを変えてもQTEにするのではなく、あくまでゲーム内のアクションで突破することになるので、「映像を見る」のではなく「プレイする映画」のコンセプトに偽りナシ。

ステルスもいいけど銃撃戦もね

探索、謎解き、バトルは連続して展開するものの、それぞれカッチリと分けられており、バトルだけはゲーム側の誘導がなく、引き金を引いて戦うのも隠れてこっそり突破するのも自由となっています。頭を狙えばカンタンに倒せるとはいえ、敵は硬めで銃の性能もそれほどよくはないため、できるだけステルスキルを狙うのが常套手段。特に今回は草むらに隠れたまま引きずり込んで倒す、「アサシンクリード」さながらの暗殺術を覚えているのでステルスが正解っぽく、途中で見つかってしまえばそのまま銃撃戦、という流れになりがち。

銃撃戦になってしまうとカバーポジションは壊れてしまうし、そうでなくてもグレネードがポンポン飛んでくるし、敵はカバーから頭を出している時間が短いモグラ叩き状態だし、持てる弾数が少ないので敵から奪わないといけないし、ゲーム側から「いいから動け!これはシューターじゃなくてアクションだぞ!」との声が聞こえてくるようです。ただ、敵に近づけたとしても格闘で応戦されるし、殴り合ってる最中もそこらじゅうから撃たれるし、接近が正解というわけでもない。単一の正解を用意しないことでバトルの自由度が確保されていると言えそうですが、もうちょっと銃で気持ちよく撃たせてくれてもよかったんじゃないかなと思う次第。

ともあれ、探索もバトルも美しい映像で派手に体験させてくれる内容は相変わらず。12時間ほどもあるキャンペーンを一気に遊びたくなるくらいには楽しませてくれます。そして、探索やバトルといったそれぞれのパートを繋ぎ合わせているストーリーが今作最大のウリ。

最高の幕引きを括目せよ

トレジャーハンターの主人公・ネイサン・ドレイクを操り財宝を求めて古代の遺跡に挑むストーリーは、要するに現代版「インディ・ジョーンズ」といったところ。これまでに前人未到の地を破壊しつくしてきたネイサンですが、今作はサブタイトルに「A Thief’s End」とあるとおり、彼にとって最後の冒険となっており、幕引きに相応しい物語となっています。最後の冒険になって突然ネイサンの兄さんが登場、という驚きの展開で、「どうしてニイサンにしなかったのか」と思わなくもないのですが、そこはそれとしてキレイに着地をしてくれました。

ネタバレをするつもりはないので詳細は書きませんが、このストーリーであのラストを示したのは素晴らしい。財宝よりも大切なモノがある、なんていうと非常に安っぽくなりますが、エピローグによってその一歩先が描かれているので、ぜひとも自分の目で確認していただきたいところ。毎回「アンチャーテッド」シリーズの邦題は原題から変更されていて、それ自体は別に悪くなかったのですが、今回ばかりは原題そのままでよかったんじゃないかなと。海賊王ヘンリー・エイヴリーの財宝を求め、彼の崇めた聖ディスマスとネイサンを重ね、彼と見事なまでに対照的な敵役を配置して、あの結末へと導く。実に見事な幕引きではないでしょうか。

今作でネイサン・ドレイクの物語は終わってしまったのですが、「アンチャーテッド」シリーズが終わるのかどうかはわかりません。新たな主人公を迎えた続編となるのか、まったく別路線の新作となるのか。どちらにせよ、「映画的なゲーム」の1つの完成形を示してくれたNaughty Dogの次なる動きに期待せずにはいられません。やたらと崩れる床の上でそろそろ壊れるかな?壊れるかな?とワクワクしながら走り回れる日が再びやってくるのを楽しみに待っていようと思います。

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