『The Messenger』をクリアしたのでレビューなど。どこからどう見ても「忍者龍剣伝」っぽく見えますが実際かなり影響を受けている様子。ファミコン風のグラフィックと音楽の中で忍者刀を振りながら駆け抜けているとまさにそれっぽいです。
しかし、それはゲーム前半のこと。後半になるとガラリと様相が変わっていきます。いや、忍者アクションであることは変わりませんが、見た目も中身もまったく違ったゲームになっていくのです。何がどう変化するのか…これをネタバレ抜きで説明するのはハッキリ言って無理。なので、今回はややネタバレありで書いていきます。
忍者なら壁から壁にジャンプできるのは当たり前
『The Messenger』は「忍者龍剣伝」へのリスペクトを感じる2Dアクションです。主人公はジャンプ&アタックのスタンダードな性能ですが、忍者なので壁に張りついてシュタシュタ登っていけたりします。ゲームを進めると、手裏剣を投げたりワイヤーを使ったりムササビの術で滑空したりと、アクションが増えてますます忍者っぽくなります。(実は壁張りつきも最初からはできなかったりする…忍者なのに…)
いまどきのデキる忍者は”飛べる”
往年の忍者スタイルとはちょっと違う本作独自のアクションとして、ジャンプ攻撃を当てるともう1回ジャンプできる、というのがあります。当てる対象はなんでもいいし回数制限もないので、うまくやればずっと空中をピョンピョンしていられます。
勘のいい方ならこの時点でなんとなく察しがつくかもしれませんが、この多段ジャンプを活用しなければ進めない場面はだいたい難易度が跳ね上がります。なんせ足場がものすごくサツバツになるわけですからね。いかに忍者といえど、もうちょっと地に足をつけて生きていきたいものです。
忍者の命はツケ払いOK
とはいえ、本作ではトゲが即死じゃないだけまだ有情といえるかもしれません。(転落は即死なので非情) 全体的な難易度は高すぎず低すぎずといってところで、多段ジャンプを焦らず冷静に決めていけるかどうかがキモになっています。死亡のペナルティも軽めで、チェックポイントで復活後しばらくは入手したお金を”ツケ払い”で徴収されてしまうというだけ。忍者の沙汰も銭次第。忍者の世界も死者に対してはやさしいようです。
ステージクリア形式は世を忍ぶ仮の姿
そんなこんなで忍者アクションを駆使してステージをクリアしていくわけですが、地形とか罠とか敵の動きなど、やや物足りなさを感じなくもありません。何というか、密度が足りないというか濃度が薄いというか、ちょっと薄味なんですよね。ステージごとに何かしらの特徴はあるものの、似たような展開が続く場所があったりダメージの危険がほとんどないような部屋があったり。ステージクリア型にしてはギュッと凝縮されていない印象で、「探索型で作ろうとしたマップをそのまま使っているのでは?」と思ったほど。
でもそれもそのはず。実はゲーム後半に入ると、ステージクリア型から探索型(=メトロイドヴァニア)に変貌するからです。これまで進んできた場所が律儀に逆戻りできる構造になっていたのは探索をするためだったわけです。
その正体は過去と未来を探索する時空忍者
変化はそれだけではありません。グラフィックと音楽もファミコン風からスーパーファミコン風になります。(変わるのは探索型になるちょっと前ですが) ストーリー上はファミコン風の世界が過去、スーパーファミコン風の世界が未来という設定になっており、ステージ中に存在する時空の歪みを跨ぐことで過去と未来を行き来できるようになっています。2つの時間軸を行き来することで、過去には通れなかった場所を未来で通過したり、未来で手に入れたアイテムを使って過去で行けなかった場所へ行けるようになったりします。こうして探索を進めていくのが本作最大の特徴です。8bitが過去で16bitが未来、それがステージクリア型から探索型への発展する…、実にうまい演出なのではないでしょうか。
そんなことより聞いてくれよ忍者よ
ちなみに、ストーリーでは悪魔軍の攻撃により人類が滅亡の危機に瀕している状況なのですが、キャラクターたちの会話はフランクで軽めです。中でも印象的なのはショップの店主。買い物をしたりエリアの情報を教えてくれたりする以外に、面白い話を聞かせてくれます。”面白い話”というのは比喩でもなんでもなく、店主に対して「何か面白い話は?」と聞くと、「じゃあこんなのはどうだ」と小話を披露してくれるのです。何だこのゲーム。なんにせよ、このノリの軽さが本作に独特の雰囲気を与えているのは間違いありません。ショップに入ったらぜひとも彼の言葉に耳を傾けてみましょう。
メトロイドヴァニア・ガイデン
そんなわけで『The Messenger』は「忍者龍剣伝」に強く影響を受けたアクションでありながら、ファミコン風からスーパーファミコン風へ、過去から未来へ、ステージクリア型から探索型へと多くの変貌を遂げるゲームとなっています。途中でゲームのジャンルが変わってしまうわけですが、刀を振りながら走り、ジャンプで壁に張りいて移動する忍者アクションは変わりませんから、印象としては「メトロイドヴァニア・ガイデン」といったところでしょうか。
忍者好きだけでなくメトロイドヴァニア好きにもオススメしたいタイトルなのですが、それを言うとネタバレになってしまうというなんとも面倒くさいゲームでもあります。だってこれを「忍者龍剣伝」っぽいアクションとして紹介したら「思てたんと違う!」になりかねませんし。ステージクリア型は世を忍ぶ仮の姿…、果たしてその正体はメトロイドヴァニアである!というわけですからね。そういう意味ではまさしく忍者ゲーなのかもしれません。